完成見学会に訪れた見込み客に自社の特長をアピールしていたUさん。施工水準には自信があるだけに、つい「○○さんではちょっと無理でしょうね」と口を滑らせてしまった。それを耳にした顧客は「よその陰口をたたくなんて」と顔を曇らせ、不快感を示した。結局、受注には至らず…。【住宅ライター:渡辺圭彦】
工務店を経営するUさんは3代目。大工であった祖父や父のものづくりに対する姿勢を継承しながら、性能やデザインも重視し、今どきの顧客ニーズにも応える家づくりを目指してきた。
展示会や勉強会にも積極的に参加して、情報収集や設計・施工のスキル向上に努めている。それだけに、自社で手がける住宅のレベルには密かに自信を持っている。
「完成見学会は、お施主様と二人三脚でつくり上げてきた建物を披露する場。よその建物とはどこが違うのか、しっかり伝えたい」とUさん。
他社を引き合いに出されつい負けん気が…
ただこの件ではその熱心さが裏目に出てしまった。見込み客を案内していた際、他社のモデルハウスでも同様の仕様であったことを告げられると、つい負けん気が持ち上がってしまった。「○○さんもそういう宣伝をしていますが、うちとは違う。うちと同じことをやろうとするのは、ちょっと無理でしょうね」。
Uさんとしては他社との違いを訴えたかっただけなのだが、相手には「同業他社への悪口」として聞こえてしまった。それまでは「ふんふん」と感心したようにうなずくだけだった見込み客は、急に顔をしかめて黙りこくるばかりだった。
Uさんも異変には気づいたものの、理由がわからず、その日はそのまま見込み客を会場から送り出し、特に気を留めることもなかったという。
翌日、その見込み客から電話があった。土地探しについての面談予約が入っていたのだが、キャンセルしたいというのだ・・・
この記事は新建ハウジング12月20日号7面(2024年12月20日発行)に掲載しています。
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