SKホーム(秋田県大仙市)は、この4年間で「高性能住宅専門店」へと変貌を遂げた工務店だ。単に性能を上げるだけでなく、デザインや素材、情報発信、大工育成などあらゆることに挑戦している。目まぐるしい変化の過程を、社長の佐々木学さんに聞いた。【ライター 金井友子】
同社は10年ほど前まで、地元・大仙市から580kmも離れた東京で5坪前後のコインランドリー建築をメインにしていた時期がある。「きっかけは冬仕事(大仙市、仙北市、横手市など豪雪地帯がエリアのため、工事ができない冬季間は雪のないエリアに行って季節労働をするのが慣例だった)。ただし、遠隔地での工事は経費がかさむうえ、1回請けてしまうと止め時が難しく、発注元の都合に左右されるため地元の仕事が満足にできないなど課題も多かった。2拠点の両立に試行錯誤した時期もあるが、地元に軸足を置こうと決めた」。
とはいえ、すぐに受注が舞い込むわけもなく、春になると「今年はどうしよう。まだ1棟しか決まっていない」という状況が3〜4年続いた。
独学で高性能住宅に着手
経年とともに味わいや愛着が増す「本物の素材」を推奨し、地域材の秋田杉を外構にも内装にも取り入れた高性能な住まいづくりに定評がある |
悪循環を抜け出すために佐々木さんが思いついたのが、人通りの多い場所に「高性能な事務所兼自宅」を建てること。「従来はこれといった特徴がなかったので、“自分”を見てもらうにはどうしたらいいだろうと考え、自分自身が暮らしたい家を突き詰めたら、秋田の冬を暖かく過ごせる高性能な住まいしかないと思った」と振り返る。
こうして佐々木さんは、2020年から高性能住宅に独学で取り組み始める。付加断熱や気密の技術、全館空調の方法をネットと本で学び、経験者や断熱材メーカーに話を聞きに行ったり、県外の住宅展示場や現場見学会にも足を運んで熱心に研究した。
「完全に手探りでつくった」という事務所兼自宅は2020年末に完成。3地域でHEAT20・G2(UA値0.25W/㎡K)の断熱性能とC値0.2㎠/㎡の気密性能を備え、空調室に設けた家庭用エアコン1台による全館暖冷房にも初挑戦した。
3つのルールを徹底
これを機に、①苦手を潰す、②自社の断熱・気密基準を満たさない顧客は断る、③ローコストはやらないという3つのルールを決めた。
以前の佐々木さんが最も苦手だったのは、・・・
この記事は新建ハウジング12月20日号4面(2024年12月20日発行)に掲載しています。
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