「住まい手の命と健康を守る」を経営理念として掲げる勝部建築(島根県出雲市)は、現場管理までこなす高いスキルを持つ社員大工がつくる高性能住宅を売りに、地域のつくり手として存在感を発揮している。社長の勝部宏さんは、そうした自社の“特性”をさらに尖らせながら、安定的かつ持続的な経営基盤を構築するため、家づくりのブラッシュアップと大工が働きやすい環境整備に力を注ぐ。【編集部 関卓実】
同社は、大工としての経験が豊富な勝部さんに加えて、入社7年目の糸川修さん、4年目の柳樂晃志さん、3年目の三嶋耕太さんの3人の社員大工とデザイン、コーディネートなどを担う勝部さんの妻・恵理さんの5人体制。高い性能を武器に地域のつくり手としてのポジションを固めつつあるなかで勝部さんは、数値だけでなく温熱環境など“体感”も含めて「高性能住宅と言えば勝部建築」と顧客から自然に“指名”されるような状態を目指す。
それにより、広告宣伝費や営業経費を限りなくゼロに近づけながら、自社の“核”とも言える大工の待遇アップ(給料や休暇など)につなげる考えだ。「大工が働きやすい環境を整えることは、当社の企業としての成長に直結している」と勝部さん。今年の初めには「毎年、給料をアップしながら、5年以内に完全週休2日制を実現する」と宣言。今年は年間休日を前年90日から95日に増やし、来年は100日にする予定だ。
“指名状態”を実現するためには「家づくりのブラッシュアップが不可欠」。勝部さんは、全国を飛び回って家づくりに関する学びを深めながら、それをリアルタイムで自社が手がける住宅に落とし込む。松尾和也さん(松尾設計室)から技術支援を受けたことを皮切りに、構造塾(M’s構造設計)や新木造住宅技術研究協議会、KKB、家づくり百貨などに参加。さらに今年からは環境塾にも参加し、さまざまな角度から設計や施工のスキルを磨き続ける。
多忙な業務の傍ら、手間や時間を惜しまずに学ぶことについて勝部さんは、は「構造塾で出会ったラファエル設計の神長宏明さんの存在が大きい。疑問点をそのままにせず、徹底的に深掘りして設計などの実務に生かしていく神長さんの姿勢に触発された」と振り返る。
学びを深めることで「なぜその性能が必要なのか」というエビデンスが理解できる。「マニアックなお客様からのマニアックな質問にも自信を持って答えることができ、うまくいかない場合であっても、原因を究明したうえで適切なリカバリーができる。工務店としての対応力は格段に向上した」と話す。
高い性能・仕様を完全固定
同社の新築住宅の基本性能は、構造は内製化した許容応力度計算による耐震等級3で断熱等級6~7、気密は・・・・
この記事は新建ハウジング12月20日号3面(2024年12月20日発行)に掲載しています。
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