若手設計士のみなさんこんにちは。
住まいの中のすてきな場所とつながりをたくさん紹介してまいりましたが、これまで紹介してきた作例の多くは居間やダイニングルームなどの、住まいの主役のような場所中心でした。
そこで今回は玄関や廊下、収納、水廻りなど、どちらかというと住まいの「脇役」的な場所をすてきに作った例を紹介してみたいと思います。
幸いたくさんのすてきな作例がありますので、今回と次回の2回に分けて紹介してまいりましょう。
小さな「ひそみ」の場所
広ーい部屋の中の小さな小さな場所、家族とつながりつつ少しだけこもってメールを打ったり本を読んだりしてひそめる場所が、もし住まいの中にあったらきっととても楽しいことでしょう。
下の写真(【写真1・2】)はまさにそんな例です。広々としたLDKの片隅に、曲面の壁で柔らかく囲まれた小さなひそみの場所があります。ここは個室ではあるけれど大きな開口でLDKと密につながっていて、家族とのつながりを保ったまま机に向かうことができます。
下の写真(【写真3・4】)もまた、すてきなひそみの一例です。ダイニングキッチンの傍らに家族みんなのための図書室が設けられています。
いったん壁で仕切って別室のように仕立てる一方で、大きな開口を開けて家族みんなとのつながりをもたらしています。中には畳が敷かれ書院机も設けられて、小さいながらも楽しい楽しい場所ができあがりました。
このように、ひそみの場所はとても小さくて良いのです。むしろ小さな場所の方がひそみ感・籠もり感は高まって、楽しさが増しそうですよね。
過ごす場所としての廊下
住まいの廊下は移動のために必要なスペースですが、脇役であるためか、とかく面積は最低限に抑えられがちです。
ところが廊下の幅をほんの少し拡げてあげると、そこはもはや単なる通路ではなくなり、独立したすてきな場所になってくれます。
下の写真(【写真5】)は廊下の幅を少し拡げて設けた例です。ご覧のように、通路プラス図書室というすばらしい機能が追加されました。幅を多めにとるだけで、これほどすてきな場所が住まいの中に誕生するのです!
下の写真(【写真6】)も同様に、廊下の幅を拡げて本棚と飾り棚を設けています。飾り棚の部分は書斎机として活用することもできます。ここは単なる通路を超えた、留まることもできるすてきな場所なのです。
これら2つの例はともに大きな吹き抜けに面しています。廊下が通路プラスアルファの幅を持つことで、階下のLDKと立体的につながる第2の主役スペースにまでなりました。
でもそのために割かれたのは、廊下の幅プラスわずか455ミリ。つまり45センチの寸法がこの住まいに大きな魅力をもたらしているのです。
住まいの中のすてきな場所に必ずしも大きな面積は必要ありません。幅をわずかに拡げたり周囲とのつなげ方を工夫したりするだけで、住まいの魅力は倍増してくれるのです。
下の写真(【写真7】)もまた、廊下にプラスアルファの魅力を加えた例です。
幅こそ従来の廊下と同じくらいですが、頭上を見ると天井がなんともすてきな形をしています。切り妻形の天井とでも言いましょうか。
そうか、この手があったか!廊下の幅を増やすことはできなくても、頭上の形は自由に決められます。間取り図上では単なる廊下でも、立体物としてできあがった姿は十分にすてきな場所にできるのです。
ところでこうした場合、天井ふところの確保は重要ですが、ここの天井高は最低部で1950ミリ。高さをキュッと絞ることでこのように楽しい造形の天井を可能にしています。
水廻りを脱・密室化してすてきな場所に
水廻りの部屋はプライバシーを必要とするため、とかく密室に詰め込まれがちです。けれどもさまざまな工夫をすることで、広々とした中に置くことも可能でしょう。
もしそんなチャンスがあったら、ぜひ水廻りを密室から解放してあげましょう。
下の写真(【写真8】)の住まいでは玄関ホールに手洗い器とカウンターが設けられています。
帰宅直後に手が洗えるのは大変便利でありがたいですね。広いLDKとガラス戸でつながっていて、明るい光に照らされています。そして何よりも、カウンターの一角を活用してちょっと腰掛けられる場所が設けてあるのがすてきです!
下の写真(【写真9】)は、洗面室を密室にする代わりにLDKとひとつながりの場所として設けた例です。床も壁も天井もすべて真っ白な、独特の浮遊感が漂う楽しい場所となりました。
そして、下の写真(【写真10】)は通路を兼ねたギャラリーにカウンターと手洗い器を設けた例です。すぐ奥にはトイレがあります。また帰宅直後に手を洗う場所でもあります。前述のようにここでも、幅を少しだけ拡げてプラスアルファの魅力を与えています。
手洗い器や洗面器は密室内に設けられることが大半だと思いますが、このように隣室の一角に設けることで、明るく広々とした中で手を洗うことができるのです。
さて、浴室だって開放的に作ることは可能です。下の写真(【写真11】)では浴室と並べて小さな庭を設け、壁いっぱいの建具で浴室とつなげています。お風呂に浸かりながら庭の緑を眺めるのはたまらなく楽しそうですね。
いかがでしたでしょうか。今回はひそみ、廊下、そして水廻りのすてきな場所を見てまいりました。
くどいようですがいちばん大きな声でお伝えしたいのは、いずれの場所も決して大面積だったり高価だったりではないということです。
日常的な面積配分とコストプランニングの範囲で、これらの魅力は十分実現できます。日ごろの住まい作り実務での常識や定石に、ほんの少しのプラスアルファを加えてみましょう。住まいはグンとすてきで楽しい場所にあふれるはずです。
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