無垢材と大工の造作技術を生かして、性能・意匠に優れる住宅をつくるKEN建築工房は10月末、現時点でのフラッグシップとなる「猫と緑と暮らす家」を大阪狭山市内に完成させた。同社社長で設計を手がける田中健太さんが、建築家・伊礼智さんや構造塾から学んだ成果を落とし込んだ。同社としては初めて、造園家の荻野寿也さん(荻野景観設計)とコラボし、暮らしに癒しと豊かさをもたらすインナーガーデンを整備した。【編集部 関卓実】
「猫と緑と暮らす家」は、バーベキューなどアウトドア好きな30代の夫婦と2人の子どもの4人家族が暮らす木造2階建て・延べ床面積42坪。室内の一角を妻がネイルサロンの店舗として活用する。14匹の飼い猫のための1・2階をつなぐ広いキャットルームや北面の玄関から南面のウッドデッキへと室内を南北に貫くインナーガーデンなどが特徴的だ。
愛猫がのびのびと遊び、くつろげるキャットルーム。1階LDKのソファの後ろから、吹き抜けに沿って2階へとつながるガラス張りの空間となっている。猫たちが専用通路で1・2階を自由に行き来できる |
吹き抜けと並び立つようなガラス張りのキャットルームは、専用の通路を通じて猫が1・2階を自由に行き来できる。LDKや玄関・インナーガーデン、2階のスタディスペース、吹き抜けを囲むキャットウォークなど、室内のあらゆる場所から愛猫たちの様子を眺めることができるようにプランニングした。
田中さんは、初めて造園を依頼した荻野さんについて、「以前から著作を読み込み憧れていた。伊礼さんの住宅デザイン学校で学ぶ中で、荻野さんに造園をお願いしたいという思いが強くなった」とし、「実は荻野さんの事務所が自社のすぐ近くにあることを知り、思い切ってお願いをしてみたら、『ぜひ一緒に』と快諾してくれた。施主の理解も得られたことから実現に至った」と振り返る。
荻野さんの提案に基づき、LDKと直につながる約7畳を通り土間の空間として「木曽石」を敷き詰め、そこに豊かな植栽を施してインナーガーデンにした。そのインナーガーデンの出口からLDK南面の外側へと広がっていくウッドデッキの周りにも緑を配した。田中さんは、荻野さんとのコラボを通じて、「家のどんな場所からもたくさんの緑を眺められることが日常生活にもたらす豊かさを実感した。特に、下草が物理的に近い位置にある(見える)ことで気持ちのいい空間が生まれているのは貴重な発見だった」と話す。
田中さんは、このインナーガーデンについて「実際に現場で荻野さんから『プラン通り、これだけ気持ちのいい風が吹き抜ける空間であれば植物も生き生きとよく育つね』と太鼓判を押してもらった」とうれしそうに話す。施主の家族も交えて行った“造園ワークショップ ”の手法も含め、荻野さんから学んだことを今後の家づくりにも生かしていく考えだ。
断熱等級6・耐震等級3の性能
同住宅の性能面を見ると、断熱性能はUA値0.4W/㎡ Kの断熱等級6(6地域)で、気密性は・・・
この記事は新建ハウジング11月30日号4面(2024年11月30日発行)に掲載しています。
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