大鎮キムラ建設は今年6月末、産学連携による「有珠の沢町パッシブモデルハウス」をオープンした。東京大学大学院の前真之准教授および前研究室(Mae・Lab)の学生とパッシブデザインや換気計画を共に検討し、構造は佐藤実さん(M’s構造設計)、開口部はYKK APが協力した。
地域工務店と前研究室、M’s構造設計、YKK APによる共同プロジェクトは、2022年の大賀建設(埼玉県さいたま市)に続く第2弾。同社がもともと佐藤さんの指導を受けていた縁で実現に至ったという。
ベースは高性能と家事動線の提案が特徴の「YUTORI(ユトリ)」。壁は高性能グラスウール16K105㎜厚充填にネオマフォーム66㎜厚の付加断熱で、屋根も同じくグラスウール吹き込み300㎜厚にネオマフォーム55㎜厚で付加断熱した。足元はスタイロフォーム65㎜厚を基礎外周部の内外に施工し、断熱等級7相当のUA値0.2W/㎡Kを達成した。
加えて、前研究室の学生らがシミュレーションを行って軒の出や窓の位置を検討し、同社スタッフが設計に反映した。学生からは「建物を南に振ったらさらに日射取得の効果が高まる」という提案もあったが、敷地条件を考慮した配置に落ち着いたという。換気(第1種熱交換換気)計画も、学生のシミュレーションによって給排気口の位置を決定した。
構造も、佐藤さんによる“構造ルール”をもとに社内で許容応力度計算を行い、耐震等級3を実現。同社にとって、社外の専門家とコラボレーションしたのは今回が初めてだが、社長の木村匡紀さんは「社員が共に設計し学びを得た成果は大きい」と話す。
集客にも生かしつつ性能の意義を啓発する
モデルハウスなので、当然ながら集客の役割もある。平屋にしたのは「受注の5割が平屋」という状況を踏まえてのこと。今後もエネルギー価格が上昇していく前提で「光熱費を抑えられるコンパクトな平屋」をコンセプトにした。10kWの太陽光発電に蓄電池も搭載し、電気料金を「ゼロどころか数万円のマイナスにできる」。
想定した住まい手は・・・・
この記事は新建ハウジング11月30日号2面(2024年11月30日発行)に掲載しています。
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