国土交通省・社会資本整備審議会は11月7日、マンション政策のあり方を検討する「マンション政策小委員会」の初会合を開いた。近年、マンションでは建物と居住者の“2つの老い”が進行。建物・設備の老朽化、管理組合の担い手不足、建替え時などの合意形成の難航といった課題が顕在化している。これらの課題解決に向けてマンション政策を見直す。
具体的には、①マンション管理適正化を促す仕組みづくり、②多様なマンション再生ニーズに対応した事業手法、③地方公共団体によるマンション管理適正化、再生円滑化への関与―などの項目について議論する。4回にわたる会合を経て、2025年1月下旬~2月上旬頃にとりまとめを公表する考え。
主な検討内容のうち、②多様なマンション再生のニーズに対応した事業手法については、区分所有法の見直しなどについて話し合う。区分所有法の見直しでは、共用部分の変更および全ての専有部分について更新する「建物更新(一棟リノベ)決議」、建物の全部が滅失した場合に建物を再建する「再建決議」、団地内建物の滅失時に建物を再建・建替えする「一括建替え等決議」などが新たに追加される予定となっている。
また、現行のマンション建替法では事業組合法人設立の際、建替え合意者・持分割合の4分の3以上の同意が必要で、権利変換計画の策定時には同じく5分の4以上の合意をもって決議が成立することとなっている。見直し後は、▽出席者の多数決による決議を可能とすること▽一定の要件に該当する場合は決議の多数決割合を引き下げる▽管理組合法人の設立要件の緩和や建替え決議などの要件を緩和する―といった措置が行われる予定。
また、建替え決議がなされた場合に金銭補償により賃貸借を終了させる制度の創設や、区分所有法の見直しを踏まえた事業手続きについても議論する。
多様な建替えニーズに対応
現状として、高経年マンションの建替えは年々増加しているものの、4月時点の累積は297件・約2万4000戸にとどまっている。また、建替え時に新たに利用できる容積率は減少傾向にあり、それに伴って区分所有者の負担額が増加傾向にある。さらに隣接地を取り込む建替えや借地権型マンションの建替えニーズが一定程度あるにも関わらず、権利者の協力が得られない、建築基準法の形態規制(容積率・高さ制限)などにより事業性や合意形成の確保が困難といった問題も生じている。
そこで多様な建替えニーズに対応するため、権利者の参加を促すための方策や、事業性・合意形成の確保が困難となっているマンションの再生を進めるための方策についても検討を行う。
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