日本ウッドデザイン協会(東京都港区)は11月15日、「ウッドデザイン賞2024」の最優秀賞である「農林水産大臣賞」「経済産業大臣賞」「国土交通大臣賞」「環境大臣賞」と「大阪・関西万博特別賞(国際博覧会担当大臣賞)」など、上位賞31点を決定した。
同賞は、木を使ってさまざまな社会課題を解決する、優れたデザインの建築・空間、プロダクト、活動や研究を表彰し、広く社会へ発信する顕彰制度。10回目となる今回は、応募総数366点の中から入賞作品226点を決定。最終審査を経て、「社会課題の複合的な解決をもたらし、イノベーション・新産業創出に寄与する作品」を選出した。
「農林水産大臣賞」は、フレンド恵学園(北海道)、照井康穂建築設計事務所(北海道)、ジェーエスディー(東京都)、岩田地崎建設(北海道)、物林(東京都)による「浦河フレンド森のようちえん」が受賞した。汎用材で構成した木造立体トラスの園舎内で、子どもたちが木に触れながらのびのびと活動できる空間づくりを実現。周囲の環境と調和した「森のようちえん」の実践例としてふさわしいと評価された。子どもの学び、地域の森林資源活用、地元事業者の技術が連携した取り組みとなっている。
「経済産業大臣賞」は、ナニックジャパン(東京都)、万建設興業(栃木県)、那須塩原市森林組合(栃木県)の「自然へのホスピタリティーと森の中の工場」が選ばれた。荒廃した森林約5.4haを取得し、約1haを工場用地として開発。森林を整備し、働きやすい職場環境を提供している。従業員だけでなく、地域住民や来訪者にも開放し、地元採用にも貢献するなど、ハードとしての工場に留まらない、地域の森林・木材を活かしたストーリー性のある取り組みが評価された。工場で発生する端材をバイオマス燃料として活用するなど、多様な活動も評価できるとした。
国土交通大臣賞は、坂茂建築設計(東京都)、家元(石川県)、石川県建団連(石川県)、長谷川萬治商店(東京都)、NPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(東京都)による「DLT恒久仮設木造住宅」が選ばれた。能登地震の被災地に建設した木造の応急仮設住宅。災害対応に必要な短期間での施工、大量の木材調達という課題に、接着剤なしで製造できる技術を応用することで対応し、社会提案性の高い作品として高く評価された。規格材を使ってパネル化することで、短時間での調達、建設が可能。恒久的利用を前提とした設計で、木材による炭素固定を長期間実現できる点も時代のニーズに合致しているとした。
環境大臣賞は、ヌーブ(東京都)、MID研究所(東京都)、竹内工務店(熊本県)、ウッディファーム(熊本県)、ランバー宮崎協同組合(宮崎県)、高森町(熊本県)の「南阿蘇鉄道高森駅・交流施設」が選ばれた。熊本地震で被害を受けた南阿蘇鉄道高森駅の「創造的復興」プロジェクト。広大なプラットフォームは木の意匠を活かした美しい空間を実現し、地域住民や駅の利用者、観光客に木の魅力を存分に伝えている。阿蘇くじゅう国立公園内に位置する立地を活かし、魅力の訴求に成功しており、同賞にふさわしいと高く評価された。オリジナルの3次元相持ち構造「修羅組み」は、地元工務店や中学生とともに開発。木材利用への理解促進と脱炭素や環境配慮を施した駅舎の木質化において、重要な役割を担っているとした。
12月4日に「エコプロ2024」(東京ビッグサイト)の特設ステージにて表彰式を開催。4~6日には特設ブースにて「受賞作品展示」を行う。
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