東京商工リサーチ(TSR、東京都千代田区)は11月11日、1-10月の「人手不足」関連倒産が244件(前年同期比90.6%増)と前年同期の1.9倍に達したと発表した。7月には年間過去最多だった2023年(158件)を超えており、このままいくと年間300件に達する可能性もある。
内訳は、「求人難」が101件(前年同期比110.4%増)で、2013年以降初めて100件を超えた。「人件費高騰」が82件(同70.8%増)、「従業員退職」が61件(同90.6%増)といずれも増加した。雇用の流動化が進み、多くの企業で人材確保に苦慮している状況が明らかとなった。
産業別では、建設業が66件(同164.0%増)と、サービス業他(73件、同73.8%増)に次いで多い。資本金別では、1000万円未満が154件(同102.6%増)で6割(構成比63.1%)を超え、小・零細企業が2倍増となった。
連合は来年の春闘で、定期昇給分含め5%以上の賃上げ要求の方針を固めたが、コロナ禍を経て業績回復の遅れた中小企業は、物価高・人件費上昇などが経営を圧迫。金利上昇の局面で、収益確保が一段と難しくなっている。東京商工リサーチでは、大手と中小企業のこれ以上の格差拡大を防ぐには、経営者の意識改革と現実的な取り組み支援が急がれるとしている。
同調査は、2024年(1-10月)の全国企業倒産(負債1000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出・分析した。(後継者難は対象外)
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