2025年4月の建築基準法・建築物省エネ法改正では、着工日によって適用される基準が変わる。25年4月1日前後の着工が予想される物件を契約する際の注意点や、改正に伴う確認申請の遅延リスクに対する備えについて、弁護士の秋野卓生さん(匠総合法律事務所)に解説していただいた。
《関連記事》 着工や受注に影響も!?2025年4月法改正で工務店はどうなる?
1.スケジュールを逆算すると…
2025年4月1日以降に着工される物件が改正建築基準法・建築物省エネ法の対象となります。基本設計と見積書ができあがったら、請負契約を締結している工務店の場合、契約してから色決めと呼ばれる実施設計に入りますので、実施設計に3カ月程度はかかるとすると、24年12月に請負契約を締結する顧客からは、改正法対応となる可能性があると見ておくべきでしょう。
2.施主に対する説明義務
他方で、契約済みの顧客であってもなかなか仕様が確定しないなど、着工が25年4月1日以降になるリスクがある顧客もいると思います。また、改正建築基準法・建築物省エネ法による住宅はコスト増となる可能性もあるので、改正法施行直前の契約の顧客の中には、何とか3月までに着工し、旧法での対応としたいと考える顧客もいることでしょう。
現行基準(旧基準)の設計図書で契約した顧客に対しては、現在の図面および仕様のまま進める場合、25年3月31日までに着工しなければならないことについて説明をする必要があります。同時に、25年4月1日以降に着工となる場合は新基準に対応しなければならないことも説明する必要があります。
3.請負代金増額リスクや工期延長リスクは必ず説明すること
匠総合法律事務所推奨の請負契約約款では、第12条(4)「令の制定・改廃、経済事情の変動による工事材料もしくは労力の調達の困難等又は建材等の価格高騰等により、請負代金が適当でないと認められるとき。」という条文があります。おそらく、皆様がお使いの請負契約約款にも同様の条項があろうかと思います。
25年4月施行の改正建築基準法・建築物省エネ法に対応するため、顧客に請負代金の増額を要請する場合には、そのリスクを事前に必ず説明していただきたいと思います。
また、建築確認における審査期間もこれまで以上に長引く可能性があります。匠総合法律事務所推奨の請負契約約款では、第11条(工期の変更)1項にて「受注者は、次の各号のいずれかの事由によって、工期内に工事又は業務を完成することができない場合は、発注者に対して、工期の変更(設計業務、監理業務の実施期間の変更を含みます。)を求めることができるものとします。」として、(3)建築確認、所轄行政庁の許認可、検査等の遅延が発生した際は、ノーペナルティーで工期延長を求めることができる条文があります。建築確認の遅延リスクについても事前に説明していただきたいと思います。
施主から取り付けて頂きたい承諾書の書式も参考書式として提供いたしますので、活用していただければ幸いです。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。