住宅業界の市況が厳しくなる中、地域工務店に設備を提供するメーカーの役割に注目が集まる。多種多様な建材設備の魅力は、工務店の価値にもなる。本連載では、建材・設備メーカーのトップに、新建ハウジング発行人・三浦祐成が「今こそ聞きたい未来の話」を深掘りする。第5回は、「制震テープ」や制震ダンパー「ミューダム」など、制震装置を開発するアイディールブレーン(東京都千代田区)会長の佐藤孝典さん。年始に起きた能登半島地震は地域に甚大な被害をもたらした。今後も南海トラフ地震や首都直下地震が予想されるなか、工務店は住まい手の安全を守るために、“地震に耐え続ける家”を問い直す時期にある。日本の家づくりのミライを守る開発者たちのトップの真意に迫った。
三浦 制震に関わる製品開発に、いつから取り組み始めたのか。
佐藤 私が清水建設で働いていたときに、社内ベンチャー制度を利用して、2001年にアイディールブレーンを発足した。そこで、高層ビル用の制震装置に使う粘弾性体を、木造住宅向けに両面テープ状に加工したのが「制震テープ」。面材と柱・梁の間に1㎜厚のテープを挟むことで、地震時の振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、揺れを軽減する仕組みになっている。
ビルにおける制震の基本は、揺れのエネルギーを吸収すること。人間に例えると“運動させて疲れさせること”に近い。昔のテレビ番組で、服と下着の間にとりもちを付けて走るゲームが放送されていたが、抵抗があると走りにくいし、疲れやすいことがわかる一例だ。
住宅も同じ原理で、地震の振動エネルギーを効率よく吸収することで、地震が起きても損傷を極限まで抑えることができる。また、吸収するために住宅のどの箇所にテープを貼ればいいかといえば、動きやすい釘の真下にテープを貼るのが、最も効果を発揮する。
三浦 全ての面材の釘の下に制震テープを貼るとして、住宅1棟に対してどの程度の量を使用するのか。
佐藤 住宅の規模により差はあるが、30坪2階建てに対して約500mが必要。15m×32巻(計480m)を1箱として納品しているため、1.5箱が目安の総量と思ってもらえればいい。材料費だけなら15万~25万円で、施工は約2~3人工というところだ。
三浦 地震に耐え続ける家の価値が、その程度の追加費用で手に入ると考えれば安価だと感じる。あとは施工費や手間を工務店がどのように考えるか。制震テープと同程度の性能を制震ダンパーで再現するなら、どの程度の数が必要になる?
佐藤 各製品ごとに性能や特長が異なるため一概に言えないが、制震性能は建物全体のバランスが重要で、建物に偏りが出ないよう全体にまんべんなく配置することが大事。制震テープ並みの高性能を実現するには、かなりの費用がかかる。ただし・・・
この記事は新建ハウジング11月10日号16面(2024年11月10日発行)に掲載しています。
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