工務店の社長・Kさんが若い頃の話だ。リフォーム工事を受注し、壁や床を剥がしたところ、蟻害や雨漏りなどで構造材はボロボロの状態。慌てて構造補強に必要な部材や金物を計上してみると、手元にある在庫だけでは足りない。シビアな工期だったため、駆けずり回って部材を集める羽目に…。【住宅ライター:渡辺圭彦】
当時、Kさんは独立したばかり。どんな小さな仕事でも二つ返事で引き受け、地域での実績を積み重ねていこうとしていた。問題となったリフォーム工事もそのひとつだ。「スケジュールを仕事で埋めていきたいと必死でした。そのため現場調査や見積もりが甘くなっていたのかもしれません」とKさん。
「受注するためにも安く見積もらないと…」
その家は築20年ほどの木造2階建て。建売住宅で、販売した会社は倒産していたため、たまたまポスティングのチラシを見て、地元の業者であるKさんに声がかかった。
一応現場調査はしたものの、小屋裏をざっとのぞいた程度。「床下点検口が見当たらなかったので、下は見ませんでした。いま思えば、”床下点検口がない”という時点で警戒すべきでした」とKさん。
顧客の要望はLDKと浴室、トイレを新しくすること。他社にも見積もりを出しているとのことで、受注するためにはなるべく安い金額で見積もる必要があるとKさんは考えた。
「浴室とトイレは普及品クラス、キッチンはそれよりちょっといいものを。お客様はいま住んでいるマンションが売れて、引き渡し日が決まっているので、工期は絶対厳守とのことでした」(Kさん)。
追加の補強工事を負担 赤字の現場になってしまった
予算も工期もぎりぎりだったが、なんとか受注に成功。「やれやれ」といざ着工したら、構造の劣化が明らかに・・・
この記事は新建ハウジング10月20日号10面(2024年10月20日発行)に掲載しています。
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