全国建設業協会(今井雅則会長、全建)が10月3日に公表した2024年度「労働環境の整備に関するアンケート」結果によると、時間外・休日労働時間について使用者と労働者が締結する「36協定」で、「一般条項・特別条項とも締結」している企業の割合は53.6%となり、前年度調査から10.9ポイント増えた。その一方で「一般条項のみ締結」は40.7%で9.4ポイント減少、「締結をしていない」は5.7%で1.5ポイント減少している。
特別条項では、一般条項で定められた時間外労働の限度(月45時間、年360時間)を超えて時間外労働が行えることから、4月から始まった時間外労働の上限規制への対応策として活用する企業が増えたと考えられる。36協定で定めた時間数については、現場・事務所ともに1年間で「160時間以内」とした企業が多かったが、現場ではそれに次いで「541~720時間」(27.8%)の企業が多く、前年度より10.2ポイント増えた。
災害による時間外労働 除雪が最多
非常災害対応による労働時間延長について定めた「労働基準法第33条」に基づく申請状況については、過去1年に適用申請または事後申請を行った企業は全体の5.9%だった。最も多かったのは「除雪業務」で63.6%、次いで「災害の復旧工事」が47.1%で多かった。この申請手続きを行うことで時間外・休日労働の上限規制や「36協定」の内容にかかわらず、時間外・休日労働をすることが可能となっている。
残業の要因と対策にギャップ
月当たりの平均残業時間数については、現場・事務所ともに「15時間未満」が最多に。全体的に事務所よりも現場の方が、労働時間が長くなる傾向が見られた。次いで多い「16~30時間」は、現場技術者で28.7%、現場技能者では17.3%を占めている。
時間外労働が多くなる理由については、現場・事務所のいずれも「作成する書類が多すぎる」(現場:71.5%、事務所:63.5%)、「人員が不足している」(現場:69.4%、事務所:43.9%)が上位となった。
労働時間を短くするための工夫として、現場では「週休2日モデル工事」(50%)、「労働時間の適正管理」(44.7%)、「経営トップによる声かけ」(42.4%)に取り組む企業が多く、いずれも前年度より割合が増えている。事務所では「定時退社の呼びかけ」(46.9%)、「業務効率の向上」(42.7%)、「経営トップによる声かけ」(40.0%)と答えた企業が多かった。「呼び掛け」や「声かけ」だけでは、残業の要因となっている「書類が多い」「人員が足りない」などを解決できないことから、より効果的な対策を実施する必要がある。
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