全国建設業協会(今井雅則会長、全建)が9月27日に公表した2024年度「発注関係事務の運用状況等に関するアンケート」結果によると、監理技術者を補佐する者を置くことで監理技術者が複数の工事を兼任できる「特例監理技術者制度」(2020年10月1日施行)を積極的に活用している企業は、国土交通省発注では2割強(21.5%)とやや多かったが、民間発注では8.7%にとどまっていることがわかった。同制度にメリットを感じている企業も49.9%と半数にとどまっている。(※調査結果Ⅱ「会員企業からの回答」の数値、以下同様)
「活用していない」または「(活用に)メリットを感じない」理由については、「監理技術者の負担が大き過ぎる」「複数現場を管理することによる品質の低下を懸念する」「実質3名の技術者配置が必要となる結果、人員不足となる」「発注者に提案しても却下される」などの声が上がっている。
同調査は、会員企業の状況や課題を把握し、入札契約制度の改善に係る要望の基礎資料とすることを目的に実施。調査期間は2024年7月。回答数は2202社。
「スライド条項」の適用 民間8.3%
価格変動などに対応するための「スライド条項」の申請に関する調査では、直近1年間にスライド条項を申請したかを尋ねたところ、「申請しなかった」が62.4%と6割強に。民間発注では「申請しなかった」(71.2%)、「契約書になく申請できなかった」(14.6%)との回答が他の発注者に比べて高かった。「申請したが、適用されなかった」割合も、民間発注が4.7%で最も多かった。「申請し、適用された」割合は、全体では24.9%、国交省発注でも48.7%にとどまり、民間発注では8.3%と低い水準となっている。
スライド条項の適用を申請するにあたって問題になっている点については、公共工事では「提出を求められる書類が多い」(22.7%)が最多。民間工事では「交渉には応じるが、増額には応じてくれない」(20.6%)が最多となっている。個別意見では、「求められる資料が多く割に合わない」(公共工事)、「契約書にスライド条項の記載がない」(民間工事)、「短期間の工事が多く、スライドの適用にならない」(同)などが上がった。
工期設定、作業員の休日考慮されず
「新・担い手3法」の施行により対応が強化された適正な工期設定については、「適正」と「概ね適正」の合計割合が、国・都道府県・政令指定都市・市区町村、PFI事業者では8割を超えたが、民間発注者では7割程度(75.4%)にとどまった。
適正でない内容について、民間発注者では「作業員の休日(週休2日など)が考慮されていない」(61.4%)との回答が最多となった。次いで「降雨・降雪などの作業不能日が考慮されていない」(38.6%)、「猛暑日が考慮されていない」(35.4%)との回答が多くなっている。国などを含めた発注者全体では、「設計内容と現場条件が乖離(かいり)している」「支障物が未撤去、関係者との協議が整っていない」などが多かった。
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