連載後半は、Euro Cucina/FTKに出展した各社のスタンドを巡ります。トレンドセッターとしての役割を担って出展したおよそ100社のスタンドはどこも多くの来場者で賑わい、写真を撮るのも一苦労でした。今回は、メーカー別に各社の展示の様子を独自の視点を交えてナビゲートします。
ここで紹介するメーカー11社
※メーカー名をクリックすると当該メーカーにジャンプします
①Nobilia -ノビリア- / ②Lago -ラゴ- / ③Febal Casa -フェバル・カーサ- / ④Veneta Cucine -ヴェネタ・クチーネ- / ⑤Stosa Cucine -ストーサ・クチーネ- / ⑥Aran Cucine -アラン クチーネ- / ⑦Snaidero -スナイデロ- / ⑧Vipp -ヴィップ- / ⑨Eggersmann -エッガースマン- / ⑩Abimis -アビミス- / ⑪Scavolini -スカボリーニ-
各社スタンド紹介の前に…。開場前の雰囲気や会場レイアウトはこのような感じでした。
【EuroCucine/FTK エントランス】開場前、まだ静かです
【来場者レコードを記録した2018年と今年2024年を較べてみると…】
出展社数は2028年と比べおよそ2/3に、展示面積は約半分になりました
【HALL2&4会場レイアウト】
キッチンと設備機器双方がミックスしたレイアウトも特徴的でした
白地キッチン60社 網掛け
アプライアンス25社
サスティナビリティなスタンドづくり
まずは、今年主催者が掲げた《環境負荷の少ない・サスティナブルな会場づくり》に呼応したメーカーから、スタートします。
①Nobilia -ノビリア-
1947年創業、75年を超す歴史を持つドイツの大手キッチンメーカー。年間78万台のキッチンセットを生産、50%を海外に輸出しています。サスティナビリティに配慮する会場づくりを掲げ、スタンドの機材80%を2022年の見本市で使用した材料で賄いました。
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広くオープンなスタンド。気楽に入ってみることができるので好評
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クラシックモダンのキッチン。木扉はオークやウォルナットなどのリプロダクション。100%水性塗料を使用
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キャビネットの一部にOpenboxを組み込むデザイン。エクストラセラミックワークトップ(リサイクルガラス10mm+セラミック6mm)。右手奥はリビングコーナー(下写真)
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左:EXTRA Hobをビルトイン 右:リビング収納
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《SENSO》カラーはピーチファズ。トレンドカラーのキッチンは100%リサイクル素材を使用。扉は超マット仕上げのFENIX
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コーラルのキッチンと同じSENSOシリーズでもう一つのトレンドカラー、ヒスイ色のペニンシュラキッチン。キッチンのすぐ隣の扉を開けると日常感満載のクローゼットが出現する
②Lago -ラゴ-
環境保障・サスティナビリティ・循環型社会を目指し、デザイングループや学者とコラボした《GOODLIFEプロジェクト》に基づき、物流負荷の軽減・再使用・廃棄ゼロなどを徹底したスタンドづくりを行いました。
XGlassや特殊な熱処理木材など先端技術を製品に取り込みながら、環境配慮やサスティナビリティにも注力したモノづくりを進める新進気鋭のメーカーの一つです。
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Hall24、820㎡の大きなスタンドはボーダレスな大空間、マンションのモデルルームのような展示
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スタンドを回遊。ゆったりとしたソファの置かれたリビングルーム、右手奥にベッドルームが続く
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アルミニュウムを使用したオーク材(4mm厚)の扉は、導管を際立たせる表面加工を施し、さらに特殊な熱処理を加え、耐摩耗性・耐水性を向上させた。アイランドの台輪部分はガラスを使用
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ダイニングテーブルとチェア。テーブルが浮いているように見えるのはLagoならではのガラス脚の成せる技
大空間で展開するキッチンリビング
会場内には800㎡を超す大きな展示面積を持つスタンドが点在、キッチンだけでなく家一軒の丸ごとの暮らしをデザインしたインテリア空間が来場者の目を惹きつけました。ここからは、ライフスタイル提案を大空間で展開したメーカー3社(フェバル・カーサ、ヴェネタ・クチーネ、ストーサ・クチーネ)をご紹介します。
③Febal Casa -フェバル・カーサ-
トータルリビング展開をするCOLOMBINI Group(サンマリノ)。アートディレクター、アンドレア・フェデリチによるキッチン、リビング、ユーティリティなどを展開。コネクティングドアでつながる850㎡の大空間は家具トレンドも取り入れた充実したインテリア空間でした。
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トータルリビング展開をするCOLOMBINI Groupの一員ならではの充実したインテリア空間を展開していました
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コネクティングドアで各室をつなぐ。キッチン、リビング、ベッドルーム、ウォークインクロゼットがスムーズな動線でひと続きの大空間を構成しています
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Daniel Libeskindデザイン《ORIGINA》。今年のキッチンの中でもひときわ目を惹いたアルミニウムの3Dドアは100%リサイクル可能。トップとバックウオールのトラバーチンは今年の人気柄の一つ
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シンプルなキッチンにレトロ感を見せる框組ラッカー扉の組み合わせ。アイランド部にインビジブルコンロを組み込んだ。TOPは焼結石(NeoLith)、両サイドにカウンターを回すトレンディスタイル
④Veneta Cucine -ヴェネタ・クチーネ-
『More Space, More Free』がコンセプト。空間を間仕切るシステムパネル《Groove System》で垂直面を構成しています。キッチンを軸に『1つ1つの部屋の独立性を保ちながら全体がつながる空間』をレイアウトしてみせました。
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回遊空間をシステム家具で自由に間仕切る。オープンやクローズを巧みに配置した空間づくり
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視線をさりげなく遮るオープン棚
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《ICONICA》L型アイランドに方形のスナックテーブル。TOP:焼結石(Carant)、 扉:アルミ PVDブロンズ仕上げ
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「Pro」と名づけられたプロファイルを使用し水平ラインを強調したシンプルなデザイン
⑤Stosa Cucine -ストーサ・クチーネ-
アニバーサリーイヤー(60周年)を迎えたストーサ・クッチーネは900㎡を超える広さのスタンドをエントランス左手正面の特等席に設えました。『機能とデザインの融合、時代を意識したモノづくり』を目指した10セットを超えるキッチンが展示されました。
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横に長いアイランド+円形スナックテーブルのデザインは今年のトレンド。TOPは天然石、山折りで収納するポケットドア、オープンBOXを使った見せる収納にはLEDライトを組み込む
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スタンド正面レセプション右手の展示キッチン。センターにI型キッチン、左手にウオークインのワインセラー、右手に冷蔵庫や大型収納を配置した空間構成。ワインセラーのLEDライトはカラーチェンジを楽しむ
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3カラーが同一空間に使われたキッチン。ウォールキャビネットの上部はタイル貼。ワークトップは焼結石(デクトン)。素材やカラーMIXの空間。ノスタルジックな雰囲気が漂う
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ホワイトキッチンにグリーンが映える空間。2列型のキッチンに渡したシンプルな木カウンターがナチュラルなアクセント。爽やかな印象の親しみやすいキッチン。TOP:焼結石(デクトン)
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ラッカー扉のブルーと木扉のツートンキッチン。吊戸の上下、ペニンシュラ型アイランドの下部などに組み込んだLEDライトが空間にアクセントとトレンド感をプラス
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変形のスナックカウンターが全体のデザインに動きを与えているアイランドキッチン。天板・扉・バックパネルもすべてシンタードストーン(ネオリス)を使用。エリカのLhob(ロブ)をビルトイン
全てのメーカーがトレンドセッターといえる中でも、会場内で特に目を惹いたスタンドは?と聞かれると、とても難しいのですが…。LEDライティング、伝統の加工技術と素材そしてアウトドアキッチンの3点にフォーカスして選んでみました。
美しさを際立たせるLEDライン照明
⑥Aran Cucine -アラン クチーネ-
ストーサとほぼ同時期に創業したアラン クチーネ。デザインと価格のパフォーマンスのバランスが認められ、世界で一番売れているキッチンメーカーのひとつといわれています。今年は、最先端のLEDペリメーターシステムを駆使しながらレトロモダンな雰囲気を出した《LUCE》のようなクラシックとコンテンポラリーを融合したデザインが注目されました。
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アシンメトリーなバーチカルリブを塗装扉に施したMarco Piva デザインの《LUCE》。名前の通り、LEDのライン照明がシンプルな美しさを一層際立たせる
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オブジェのブルー、小物や水栓に使われた真鍮のゴールドがラインライトと共に美しいアクセントに
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今年の定番レイアウト、大形のアイランドキッチンとバックのオープン棚収納。垂直・水平のジオメトリックなラインをLEDラインライトで際立たせている
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ハーフトランスペアレントのガラス扉はリブガラス、左右にスライド
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扉勝ちで収めたアイランドキッチン。扉はこちらもバーチカルリブが施された木扉仕上げ
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扉勝ち納めのTOP
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スターシェフDavide OldaniとAttida Veress のコラボレーションで2022年に発表された話題のキッチン《CUCINAnD’O》。スナックテーブルの下は電子デヴァイス置き場。「スマートフォンはしばらくしまって楽しく会話し料理しよう!」というコンセプト。デザインと使い勝手を最重要視した料理のためのキッチン。TOPステンレス、扉&スナックテーブルは楡、マットブラックアルミフレーム
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キッチンバックのアプライアンスは使わない時にはポケットドアですべて隠される
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《 VITA BELLA 》という名のモダンクラシックのキッチン。エンペラー柄のシンタードストーンが、TOP ・バックスプラッシュ・レンジフードにも使われた。カウンター・トールユニット扉はトレンディカラーのくすんだ赤色
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はじめて発表するアウトドアキッチン《GIRASOLE》、テラコッタ色のセラミック、マットブラックのアルミニュウム、チークといった環境に配慮した素材で構成されている。LEDライトが組み込まれたアルミニュウムデッキとキャスターを装備
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LEDライトが組み込まれたアルミニュウムデッキ
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左:テラコッタ色のセラミック、マットブラックのアルミニュウムフレーム 右:スケッチ
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2018年に発表されたStefano Boeri Archtetti デザインの《OASI》。アイコニックなシングルダイニングクッキングブロックに再会(左)。食のすべてのプロセスをこのアイランドキッチンで完結させる。中央のレモンの木は水やりや日照にも自動的に対応する装置を備えている(右)
⑦Snaidero -スナイデロ-
100%メイドインイタリーを謳って75年以上の歴史を持つイタリアを代表するキッチンメーカー。プロダクトデザイナーP.Pininfarinaをはじめ多くのデザイナーとのコラボレーションにより数々の名デザインが生まれています。LEDライティング、メタルPVD加工、ガラス、天然石などのトレンドアイテムをしっかりデザインに取り込んだラインアップでした。
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エントリーモデルとして発売された《JOY》、鏡面棚板システムSegno Boiserie、アルミ粉体塗装幕板上下に光を出すVelo、天上から吊るしレンジフードをカバーするDominaといったLEDを組み込んだシステム部材が披露され、注目をあびた
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左:Segno Boisewrie 中央:Velo 右:Domina
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クラシカルなデザインにモダンな彩りが加わったラグジュアリーキッチン《FRAME》。「鏡面仕上げの天然大理石サンローランカウンター」「精緻な加工の水返しを回したPVDフィニッシュのステンレスTOP」「3Dエフェクトのグレーテッドグラス扉+LED」など新旧の素材を巧みに配した
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人気デザインの一つ《WAY》。TOPはブラジル産のグラニットタージマハル、スナックカウンターはユーカリプタス。フォレンティーノ・レッドの塗装扉は最終工程でメタルパウダーを振りかけて研磨することで 、見る角度によりゴールドやブラウンに変化して見える
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ミニマルデザインの新作《ELEMENTI》、クォーツタイルを横貼でユーカリプタスのテーブル、アルミダイキャストフレームにPVDステンレスの鏡面扉。3つの素材を組み合わせたアイランドキッチン
職人技が引き立つ人気の素材(先端素材と天然素材)
⑧Vipp -ヴィップ-
Vippペダルピン(1939年発売)からスタートしたデンマークのデザインブランド。数多くのステンレス加工品を世に送り出し、2011年に初めてキッチン《V1》を発売しました。その後《V2》を経て今年《V3》キッチンを発表。V1のデザインを継承しつつ素材をブラック粉体塗装のスチールからアルミニュウムに変更しています。インスピレーションのもとは コペンハーゲンにある同社のゲストハウス、“Vipp Chimney House “の階段のクラッディングからとのことです。
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新作V3の2つのルーツは、1938年に発売したペダルピンの技術とゲストハウスの階段室で目にしたクラッデイングの形状
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左:VIPP Pedal Bin/2009年MoMAの永久収蔵品に 右:「Chimney」の階段のクラッディング
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アルマイト処理された縦リブのシンプルなフォルム、コーナーには押出成形によるR形状のプロファイルが使われ、デザインに柔らかさが加えられた。TOPは4mmのステンレス
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R形状のプロファイル(コーナー部)
⑨Eggersmann -エッガースマン-
ドイツにおけるハイエンドキッチン。1908年創業のメーカーは創業以来4代にわたり「SOLID:無垢・本物」に拘り、早くからFSC認証の木材も取り入れてきました。天然石・真鍮・ガラスなどの素材を使ったキッチンが同社のコンセプトを存分に伝えています。キッチンが人を惹きつけるアートとして展示され、小さなスペースでありながら多くの人にインパクトを与えたスタンドでした。
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人を引き付けるアートとしてのキッチン《NAMI》。インタラクティブな場をキッチンが創る。右がデザイナーの二人。グレン・プッシュバーグとジョージ・ヤブ
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《SKYWALK》と名付けられた珪岩(ホワイトタイガー)と真鍮のキッチン。NAMIと合わせどちらもアートといえる強烈な存在感
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上:2つの異なる重い素材のキッチンが宙に浮いているような感覚 下:LEDライトがキッチンに端正な表情を加えている
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天板がスライドする大型アイランドキッチン。TOPは珪岩(ビアンコ・ヌベラ)。バックの収納は突板扉とファブリックスのテクスチュアを持つ合わせガラス扉を併用
アウトドアキッチンにフォーカス
⑩Abimis -アビミス-
レストランや陸・海軍向けのスチール製のケータリングキッチンを40年以上にわたり製作してきたメーカー。培ってきたプロのキッチンのノウハウを家庭に持ち込んだステンレスキッチン「EGO」を目にしたのは2016年のエウロクチーナでした。今年発表した「Ātria Cocktail」は屋外でのパーティを楽しむためのプロのツールが組み込まれたアウトドアキッチン。名前「Ātria」は古代の家の中心、オープンスペースの囲炉裏から取られています。
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《EGO》建築家アルベルト・トルセロとの共同デザイン。四隅のR形状・丸い把手が50’sをイメージさせます
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《Ātria COCKTAIL》 車両塗装レベルで塗装されたフレッシュカラーのボディ。素材は100%リサイクルされたステンレス鋼
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左:スリル/グラスチラー グラスの殺菌・消毒も 右:KAELO/冷蔵グラセット 開栓後のボトルの温度をキープ
⑪Scavolini -スカボリーニ-
Vol.3の最後は今号のTOPを飾ったイタリアのスカボリーニキッチン。イタリアらしい同族経営の小さなキッチンメーカーからスタート、2021年に創業60年を迎え、トータルホームデザインのリーディングカンパニーの一つとしての地位を確立しています。
ジウジアーロ、佐藤オオキ、ルカ・ニケットなど数多くのデザイナーとコラボした話題作も数多く発表されています。今回は出展各社の中でも4本の指に入る広さのスタンドでした。中央部に広い通路を設け、アウトドアキッチンを展示。近年関心が高まっているアウトドアライフへの潮流を取り込んだスタンドづくりとなりました。
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水平垂直のジオメトリックなラインと、赤紫のカラーが印象的なスパルヴィエーリ&デルチェットデザインの新作《STILO》。人が集う場所を意識したアイランドキッチン。扉:オリッサフェニックス TOP:角礫岩メディチア
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左:CEOが登場 右:キッチンバックのパネルシステム今年らしいアイテムの一つ
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左:Lhob(Elica)をビルトイン 右:斬新なデザインのライン把手
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Vueseデザインの《POETICA》はレトロモダンな新作。今年らしいスナックテーブル、框組扉、壁の棚システムなどがデザインされた。TOP:コスモライト 扉:アッシュ無垢框・アッシュ突板 バック収納扉:マイクロデコールPETドア
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カウンタ―後方ニッチ部分にベンチ
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《LIBRA》の大きな特徴に750mmモジュールの採用が挙げられる。最新モデルのアプライアンスのビルトインを想定した。厚さ22mmのガラスフレームドアには縦リブ・横リブが施され(下写真)、組み合わせ方向で表情を作る
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優しいグリーンとホワイトの框組扉、大きな格子組のガラス扉、マントルフード。エレガントな中にシンプルさをMIXさせたコンテンポラリークラシックデザイン《CARATTERE》
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スカボリーニとディーゼルリビングのコラボによる《GET TOGATHER》。キッチンは人が集まる場所、がコンセプト。人気のインダストリアルルック
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左:チタン仕上げ埋め込みハンドル 右:格子状リブガラス、ブリッジハンドル
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アウトドアモジュラーキッチン《FORMALIA》 チーク材のフレームやテーブルトップがナチュラル感を伝える。キャスター付きのキャビネットは移動も可能
次号Vol.4はいよいよ最終回です。Vol.3でご紹介できなかったメーカーのスタンドで見つけたキラッと光るデザインをピックアップしてお届けします。市内のSRでのキッチンメーカーの展示もご紹介する予定です。
4回にわたる連載の締めくくりは、今年の展示から見えてきた『これからのキッチン空間について』
次号もどうぞお楽しみに。
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