パートなど短時間労働者に対する厚生年金の適用範囲が10月から広がる。勤務先企業の従業員規模の要件が「101人以上」から「51人以上」に引き下げられ、労働者約20万人が新たに加入する見込みだ。国民年金(基礎年金)よりも給付が手厚くなるため、低年金対策につながる。
厚生年金は企業と労働者が折半で保険料を負担し、給与に応じた年金額を老後に受け取れる。短時間労働者の場合、企業規模要件に加え、週の所定労働時間20時間以上、月額賃金8万8000円(年収換算106万円)以上といった要件も満たす必要がある。
新たに厚生年金へ入る人は、大企業の健康保険組合や中小企業の協会けんぽなどサラリーマン向けの公的医療保険にも同時加入する。けがや病気で休んだ際に傷病手当金が受けられるようになる。
これまで国民年金に加入していた月収約9万円の非正規労働者らが厚生年金に入ると、保険料負担が軽くなり老後の年金額も増える。パートで働くものの、「第3号被保険者」として保険料を免除されてきたサラリーマンの配偶者の場合、年金額が増える一方、保険料負担が新たに生じる。
パート労働者が手取り収入の減少を避けて就業時間を抑える「年収の壁」問題が加速する懸念もある。このため、政府は2025年度末までの支援強化策として、従業員の手取りが減らないよう賃上げに取り組む企業に助成金を支給している。
25年の年金制度改正に向け、政府は企業規模要件を撤廃し、50人以下の企業も厚生年金の対象に加える方向で検討しており、年収の壁問題の解消を目指す。ただ、小規模な企業ほど保険料や事務の負担が重くなることから、小規模企業への支援策強化も課題となる。
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