社会情勢、法改正、生活者のニーズ…あらゆる面から工務店への要求は厳しくなっている。ただ“いい家”をつくるだけではもはや見向きもされなくなりつつある。業績が好調な登録工務店が多いエヌ・シー・エヌの常務執行役員・中川勝人さんに、SE構法登録施工店の現状と、それを支える体制について聞いた。
―工務店は今、大変厳しい状況に置かれている。SE構法登録施工店(以下、登録店)の現状は。
中川 今はリーマン・ショックの2008年よりも厳しい環境だと感じている。そもそも工務店という存在が多様なので一口では表現しづらいが、SE構法の特性を生かした家づくりで、確実に成果を出している登録店は少なくない。
とりわけ、重量木骨の家プレミアムパートナーの72社は堅調に業績を上げている。集客は確かに2020年ごろの7割程度まで落ち込んでいるが、各社とも棟数は維持できているし、単価も昨年度より平均で1000万円はアップしている。資材高騰の影響はあるにしても、一定の収益を確保できている。
登録店が厳しい市況の中でも成果を上げているのは、高い性能や品質を、業界に先駆けて実現されてきたからだと考えている。加えて、性能・品質の担保を第一に考えたうえで、高い意匠性や自由設計の良さを訴求している工務店ネットワークが、実は少ないことも強みになっているのではないか。各社とも性能や質という基礎を、SE構法をベースに確立させて、高い付加価値を持たせることができている。
―登録店、特に重量木骨の家プレミアムパートナーが提供できる付加価値とは。
中川 最もわかりやすいのは設計力(デザイン)。高単価でも設計力のある登録店は、生活者のウォンツをくすぐり“欲しい”と思わせる住宅が設計できているし受注も好調だ。SE構法は高い設計力の下支えにもなっている。在来工法ではハードルの高い空間も、SE構法なら容易に実現できるし、断熱等級やUA値では表現しにくいパッシブデザイン(大開口)もつくりやすい。
また、情報過多になっている今の生活者に本質を提示できるのも、好調な登録店が持つ付加価値の一つだと考える。生活者がSNSやYouTubeで受け取った情報に対し“こういう考えもあって、この素材を使ってこんなプランをつくるべき”と、いわば先生役ができるのは、先ほどお伝えしたように性能や品質を担保しているから。本来プロはそうあるべきだし、当社もプロであろうとする工務店をちゃんとサポートしていきたい。
SE構法を生かし切るソリューションを一社で提供
―しかし一般的な工務店にとって、SE構法の利点を生かし切ることは難しいし、コストも問題になるのでは。
中川 全棟でSE構法を採用している登録店は、標準化・商品化ができていて「型」が確立されている印象を受ける。型が決まっていれば、構造材はもちろん基礎から羽柄材、断熱材、内装に至るまで寸法や仕様を統一できるし、担当する社員や職人による差も出にくい。工期も安定するしコストダウンにも効果がある。SE構法なら、標準化しながら空間の自由度も保てる。
私たちエヌ・シー・エヌとしても、登録店の皆様がSE構法をフルに活用できるよう支援していく。SE構法、つまり構造を軸にしたネットワークではあるが、省エネ計算・シミュレーションは環境設計部、CGプレゼンはMAKEViz、非住宅は特建事業部と関連部署が連携することで、登録店に対して複合技の提案ができるソリューションを揃えている。
また、特に付加価値の部分で自社らしさを確立することに悩む登録店に対し、商品開発室を立ち上げた。ここでは、ただ登録店に代わって商品を開発するのではなく、登録店が自社で設計し、積算できる段階までサポートする。また、一社では困難なプロモーションや、設計力が弱点になりがちな工務店に対し、デザインからコストまでトータルで支援するという点は、このネットワークの発足時から変わっていない。
―その他のネットワーク、登録店の特徴は。
中川 登録店同士でノウハウや成果が横展開される機会が多い。SE構法は同じでもエリアが違うし、家づくりも自然とそれぞれの独自性が確立されていくので、登録店同士競合にならないのが最大の理由だろう。自主的に交流を深めている地域もある。意識の高い経営者が多い、というのも、このネットワークの特色ではないかと思う。
コスト以上の付加価値で経営を安定させる
―市況に加え、来年4月にはいよいよ省エネ基準の適合義務化と4号特例の縮小が施行される。工務店にとってはますます厳しい環境になる。
中川 壁量基準の改正については1年の経過措置が設けられたものの、法改正に危機感を覚えている工務店も少なくないと思う。SE構法は改正に向けた打ち手としては有効な手段になるはず。
ただ、当ネットワークはそれだけではない。繰り返しになるが、価格以上の付加価値を提供することが、今業績を上げ、経営を安定させる手段として最も大事だ。登録店は、性能や質以外の価値を武器に、成果を出している会社が実際に存在する。よく言われるように、SE構法はコストアップになるのは事実だが、それ以上の付加価値を持てるよう、構造以外のソリューションも含めて後押ししていく。これからSE構法の導入を検討されている工務店はもちろん、既存の登録店の皆様にも、当社がもつさまざまな強みを活用することで、新たな武器を手に入れていただきたい。
(sponsored by 株式会社エヌ・シー・エヌ)
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