淡路島で長年工務店を営むたかべホームズ(兵庫県洲本市)は、新しくシェアハウス事業「ココデトモル」を始めた。2022年10月から企画し、23年7月には新築のシェアハウス「なぎさ」と「このか」の2棟を完成させ、運営も自社で行っている。社長の大森宗典さんは「地域工務店が『家の価値』というハード面だけでなく、『暮らしの価値』のソフト面まで届けること」に新たな工務店のあり方を感じている。【編集部 佐野元基】
淡路島は比較的都市部に近い立地でありながら、豊かな自然にも恵まれた土地として、移住希望者から人気がある地域だ。人材派遣大手のパソナが、2020年に本社機能を淡路島に一部移転したことも記憶に新しい。大森さんがシェアハウス事業を構想し始めた22年当時は、パソナ進出に伴う知名度の向上に、コロナの影響も加わってワーケーションや貸切の需要が高まり、島内では貸別荘を建築する事業者が増加。大森さんも金融機関から打診を受けたことがあるという。
一方、22年3月に兵庫県淡路県民局が策定した「淡路地域ビジョン2050(案)」によると、人口減少と少子高齢化は50年までに加速度的に進むと推計され、淡路島を持続可能な形で保つことが喫緊の課題になっている。空き家の増加率も県内で最も高く、地域コミュニティの縮小も懸念されている。
大森さんは、こうした淡路島の現状を鑑み、移住者の住まいを提供しながら地域コミュニティも活発化させる一手として、シェアハウスに着目。空き家を居住可能なレベルにするにはコストもかかる。「淡路島に住みたいけど場所がないという人に向けて、住まいを提供する工務店らしくシェアハウスを手がけることにした」。
“ココデトモル”ためにシェアハウスを2棟建築
緩やかに暮らしたい居住者向けのシェアハウス「このか」。土間に設置された薪ストーブや、共用部にシアタールームが設けられている |
大森さんは新事業を始めるにあたり、まずは一緒に取り組むスタッフを募集した。「シェアハウスなので若い人の意見を取り込みたい」と考え、インターン生4人を採用。さらに大森さんと社員の6人体制でスタートした。
「ココデトモル」という名前の由来は、「シェアハウスに居住者の“個々”が徐々に灯っていく(湧き上がり集まっていく)」ことを願う気持ちから。それぞれの価値観に寄り添うため、多様な暮らし方を提案している。
シェアハウスとして使うための住宅をつくるのは初めてだったが・・・
この記事は新建ハウジング9月30日号5面(2024年9月30日発行)に掲載しています。
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