私は仕事の中で、住宅業界の方とお話しさせていただく機会が多いのですが、「資材高騰により苦戦を強いられている」という経営者の声を多く耳にします。
私たちの業界では、2020年にコロナウイルスの影響で住宅価格が落ち込んだのち、住宅設備や建築資材の価格高騰を背景の一つとして、先の見えない建物の値上がりが続いています。
ただ、これらは特定の誰かのみに起きていることではなく、誰しもが感じていることなので、お客様へ丁寧に説明し、理解と協力を得ることは非常に大切です。
資材高騰で利益圧迫
住宅ローン金利上昇傾向
国土交通省の公表している「不動産価格指数」を見ると2020年からの4年間で、住宅の価格は15%以上アップしています。1棟3000万円の住宅だと約450万~500万円分にもなります。
また、日本銀行の公表している「企業物価指数」では「住宅建築用木製組立材料」の価格が2020年と比べ、2022年には最大120%程度のアップ、現在も40%程度もアップしています。
資材価格の高騰分を、販売価格に転嫁できていればよいのですが、住宅という高額商品であることもあり、多くの住宅会社が転嫁できずに苦しんでいます。
さらに追い打ちをかけるように、3月には日銀がマイナス金利政策解除の方向性を示したことで、17年ぶりの利上げと住宅ローン金利の上昇予測が大きな話題となっています。
金利の上昇は、私たちの住宅提案にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
金利上昇を理解した
ユーザー提案が必須
ゼロ金利政策が解除された今、住宅ローンという金額の大きなものが扱われる我々の住宅業界では、金利が上昇すると、返済する金額もアップするという知識は必須です。
例えば(借入額:2500万円、金利:1.84%、借入期間:35年間)の住宅ローンを利用した場合、総返済額は約3400万円ですが、約3.09%の金利(17年前の一例)で計算すると、総返済額は約4100万円と、700万円もアップするのです。
金利が約1.2%上昇したことで、支払額(住宅ローン返済額)が700万円アップしてしまうため、これから住宅を購入する人(エンドユーザー)は、今までよりもさらに「総支払額」を考えながら購入を検討しなければなりません。
特に今までの金利は圧倒的に低いといわれていた分、まだ金利が上がりきる前に、(住宅購入を)決断することが重要であり、そのことをエンドユーザーにしっかりと伝えていくことこそが、私たち住宅に携わる者の使命だと考えます。
ただ、ここで振り返りたいのが、冒頭にも触れた、2021年に住宅業界を揺さぶったウッドショックです。
価格上昇の本質を見抜き
ユーザーファーストを強みに
このときは、原材料の高騰から、建物の販売価格を、粗利を加味し、500万円近く上げざるを得なかった、との話も耳にします。
仮に販売価格が2500万円→3000万円に500万円アップし、その3000万円借り入れたとすると、前述の条件(金利:1.84%、借入期間:35年間)では、返済額が約700万円アップします。
つまり、
A:金利が1.2%アップ
B:販売価格が500万円アップ
このどちらの場合も、エンドユーザーの総支払額(総返済額)は700万円アップすることになるのです。
ただし、どちらにしてもエンドユーザーの支払額が700万円アップしてしまうのですが、「A:金利が1.2%アップ」「B:販売価格が500万円アップ」の2つのケースには、圧倒的な違いがあります。
「B:販売価格が500万円アップ」のケースでは、住宅会社の売上高も500万円アップしますが、「A:金利が1.2%アップ」のケースでは、住宅会社の売上高には全く影響がありません。借り入れた金融機関に支払われる利息が700万円増えるだけです。
もちろん、エンドユーザーへ適正価格で住宅を提供できることが最も望ましいですが、「A:金利上昇による支払金額+700万円(図1)」と「B:販売価格アップによる+700万円(図2)」では、お客様にできる「価値」が異なります。
販売価格をアップさせた分の「価値」を付加し、さらにそれを対外的にアピールすることが重要です。
例えば、太陽光を搭載した「環境対応住宅」は、二酸化炭素の排出削減に貢献するため、光熱費削減だけでなく、SDGsの視点からもアピールポイントになります。
また、「デザイン性」を高めた住宅では、お客様の興味を引き付けることが可能になります。
自社の「コンセプト」を反映させた住宅では、お客様に対し、あなたの「想い」を乗せることができます。
このように、金利が上昇基調にある現在は、住宅ローン金利が上がりきる前に、住宅に何らかの「価値」を付加し、「購入する意義」の高いものをエンドユーザーへ提供することが重要です。
「私の会社はお客様に何を『価値』として提供するのか」
「その『価値』は金額に見合う、金額以上のものであるのか」
お客様の支払い負担アップが予想されるこれからの時代、今まで以上にこの本質的な課題を問われる時代になるでしょう。
サポート部は、全国の住宅会社に対し、様々な角度から時代に応じたサポートメニューを提供しています。 株式会社ナックは1971年創業、1999年東京証券取引所市場第一部(現東証プライム)に上場(1997年の東京証券取引所市場第二部上場より昇格)。「企業は損得に非ず、常に善の道を歩み、広く社会に貢献するため発展成長を第一義とすべし」を企業理念として展開。 建築コンサルティングカンパニーは、1992年の事業スタート以来、「住まいを通じ豊かな未来を創造する」を事業ミッションとし、地域密着の住宅会社支援と時代に先駆けた価値創造に挑戦。 |
サポート部 マネージャー 長 正之 |
株式会社ナック建築コンサルティングカンパニーでは、住宅会社を支援する無料会員制サービス「D-mot」を提供しています。 この度ご紹介させていただいた、住宅商品の一例「環境対応住宅」「デザイン住宅」「コンセプト住宅」を「D-mot」内にて無料でダウンロード可能です。 ぜひ登録のうえご活用ください。 |
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