帝国データバンク(東京都港区)は9月26日、同社が実施した2月と7月の「価格転嫁に関する実態調査」において、価格転嫁の割合を回答した7675社を対象に、価格転嫁状況の変化を分析した結果を発表した。
2月と7月の価格転嫁状況を比較すると、価格転嫁率が「拡大」した企業は32.4%と約3割にとどまっていることがわかった。「縮小」した企業は20.8%、変化がなかった「横ばい」は46.7%と半数近くを占めた。「拡大」では、「2割未満」から「2割以上5割未満」に転嫁が進んだ企業の割合が7.4%と最も高い。「縮小」は「8割以上」から「5割以上8割未満」が4.2%と最も高くなった。転嫁状況に大きな変化はなく、コスト上昇に価格転嫁が追い付けない状況が続く。
一方、2月に「全く価格転嫁できない」と回答した企業のうち、7月に「多少なりとも価格転嫁できている」と好転した企業は49.5%にのぼり、転嫁が進む兆しがみられた。「5割以上」転嫁できている企業(10割・8割以上・5割以上8割未満の合計)は、9.4%と1割近い。
企業からは「交渉により徐々に単価の見直しができてきている」などの声が寄せられ、価格転嫁に関する風向きが変わりつつあることがうかがえる。しかし、医療や介護などで定められる公定価格、報酬規定のある仲介手数料、書籍やCDの小売販売など価格の決定権がない業界では、価格転嫁が難しく企業負担が増える実態もある。
同社が8月28日に発表した「価格転嫁に関する実態調査(2024年7月)」によると、価格転嫁率の平均は前回調査(2月)から4.3ポイント増の44.9%。全く価格転嫁ができない企業は1割を超えるなど、依然として厳しい様子がうかがえた。
同社は、今後の賃上げの実現には、継続的な価格転嫁率の拡大が必要不可欠だとしている。
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