若手設計士のみなさんこんにちは。
さて、住まいの楽しい場所とつながり、今回は内と外とのつながりを見てまいりましょう。
私はいつも思うのですが、たくさんのつながりの中でも屋内と屋外とのつながり方は、もっとも住まい全体の魅力に影響する、大切な存在なのではないでしょうか。
どんなふうに外とつながったらすてきな楽しい住まいが作れるでしょう。じっくり見てみましょう。
内と一体になった外
【写真1】の住まいでは、LDKがそのままスーッと庭に向かって延びてゆき、気がついたらそこは庭のウッドデッキだったという作りになっています。間に建具はあるものの、開け放してしまったらなんの境界もなくなって、内と外とが一体の存在になっています。これだけ強くつながっているとLDKはもはやウッドデッキも庭もぜんぶ含めた広大なスペースになってくれます。空までがLDKの一部になってくれていますよね。
ご覧のように、床、壁、天井が途切れることなく外まで滑らかにつながっています。開口部は垂れ壁のないフルハイト。これだけの要素を集めますと、まるで魔法のようにLDKが拡がってくれるのです!
上の【写真2】はこの住まいを外から見たものです。LDKがそのまま外まで飛び出しているように見えていた部分は、この方向から見ると、わりと普通にウッドデッキであることがわかります。
ところが、見て下さい。真っ白な壁がスーッと内から外まで1枚で延びてきています。そして頭上の大きな大きな庇。室内の天井とまったく同じ高さ、同じ素材です。これらの工夫によってLDKは体感的に倍増できるのです。
外のような内
さて、次の写真をご覧下さい。上と同じ作者による別の住まいのLDKを庭から眺めたものです。
先ほどの例に対し、こちらはなんだか外が土間のようにして室内深くまでズズッと入り込んでいるような気がいたしませんか?
建具があることでわかるように、奥は明らかに室内なのですが、床を外と同じモルタル金ゴテで仕上げているため、外との親和性の大変高い内部空間ができあがりました。
そして先ほどと同じく深く張り出した軒先、外も内もフラットな天井、外から内にスッと入り込む白い壁。これらの要素が相まって、LDKを内でも外でもある楽しい空間に作り上げています。
次の住まいも同じく、外がそのまま内に入り込んだ土間のようなダイニングルームを持っています。両サイドの奥にまるで小上がりのようなリビングと茶の間スペースがあるので、土間っぽさがますます強調されています。子供さんが外に出たり入ったり上がり込んだりして楽しく過ごす様子が目に浮かぶようです!(【写真5・6】)
内部のひと部屋みたいな外
下の写真(【写真7】)をご覧下さい。なんて広々としたサンルーム、そして巨大な斜めのガラス窓!そう思われることと思います。
が、実際にはここは完全な外部です。斜めの大開口にガラスはなく、外と完全につながっています。
けれどもこの覆われ感は、まるで内部の部屋を感じさせますよね。頭上にはガラスの入ったトップライトまでついていますものね。
ここがまさに作者のねらいです。内と外とを極力一体化させるために、まるで室内のひと部屋のように見える外を作り出したんですね。
次の写真(【写真8】)もまた、室内のひと部屋感が満載の外です。LDKの延長として、ユーティリティスペースを兼ねた小部屋が用意されています。
ところがここを昼間に見ますと、実はこの部屋は完全な外だったということがわかります。下の写真(【写真9】)をご覧下さい。
夜になると空は真っ暗で、暗色の天井のようにも見えます。作者はそこを捉えて壁付きの照明で床だけを照らして、日が暮れるとたちまち室内の仲間入りをする楽しい外を作り出しました。大きな洗濯流しと頭上のステンレスフレームもいっそう室内感を高めています!
さあ、庭に「上がって」みよう
ところで、庭とはふつう部屋から下りて出るもの、というのが無意識の常識ですよね。けれども、もし庭を「上がる」場所にしたらどうなるでしょう。
下の写真(【写真10・11】)は、屋外暖炉のあるすてきなウッドデッキをLDKから眺めたところです。
階段一段半くらいの高さ、よいしょと腰掛けるのにもちょうど良いくらいの高さを上って庭に出ます。思わず裸足でポンと出たくなる、とっても身近な庭ですよね。
こうして庭をあえて室内床よりも高くしますと、内と外はグッとつながりを増してくれます。庭の緑や家具などのすてきな要素も、より目線の近くに上がってきます。こうして外は、さらに身近な存在になってくれるのです。
そして次の写真(【写真12】)は、2階にあるルーフテラスです。子ども室から上って出る、ウッドデッキ仕様のすてきなルーフテラスです。
テラスやバルコニーなどの外部を2階に設けますと、防水のためにどうしても開口に立ち上がりを設ける必要が出てまいります。いわゆる「またぎ」ですね。
ところがこのまたぎの存在を逆手にとって、外部全体をまたぎと同じだけ高くしますと、先ほどの例と同じように外がとてもすてきに内とつながってくれます。
ベンチに腰掛けたらそこに庭の床がある。この親密さはたまらない魅力ですね!
ほんの少しでも外を内に近づけよう
さまざまな角度から例を挙げて、内と外とのつながりを見てまいりました。
こうして見てみると、部分部分のしつらえに小さな工夫を重ねてゆくことで、外はどんどん内に近づいて一体の存在になってくれるのだとわかります。
敷地全体が住まいの中と一体になってくれたらどんなにすてきでしょう。小さな家でも広々と楽しく暮らせること間違いなしです。
ならば、たとえ全部の外が内と一体になれなくても、とにかくほんの少しでも外を内に近づける工夫を貪欲にしてゆく。予算や工期の制限は無視できないけれど、なんとかやりくりして少しでも住まいをすてきにしてゆく。
こうした工夫をたくさんたくさん重ねることで、住まいはどんどん魅力を増してゆきます。そして住み手はどんどん幸せになってくれるのです!
次回もまた楽しい事例をたくさん紹介いたしますね。お楽しみに!
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。