松尾和也さん流エコハウス設計メソッドを毎月10日号でお届けする本連載。今月は、住宅の形がこれからどうなっていくか、松尾流に予測します。
約30年前の新築住宅を思い返してみると、「出窓」「ガラスルーバー窓」「天窓」がついている住宅が大半を占めていました。これらは明らかに短期的な流行でした。今は、そのどれもがほとんど絶滅しました。それぞれ結露が多い、値段が高い、気密性が悪い、雨漏りする、といった事象を一通り経験した結果、淘汰されたと思っています。
それと同様に、短期的な流行だと思っているのが「軒ゼロ」および「外観が黒い」住宅です。毎年暑さが激しくなっているのは皆さんが痛感している現実です。これを昔から先取りしてきたのが沖縄です。沖縄に旅行したことがある方ならよくわかると思いますが、沖縄の住宅は鉄筋コンクリート造で4方向に庇が長く、白っぽい住宅が大半を占めます。これは冷房がなかった時代に少しでも暑さをしのぎやすくするために生まれてきた色と形状です。とはいえ、実は那覇市の観測史上最高気温は35℃程度でしかありません。現時点で、気温の面では本州の大半のエリアよりも低いのです(ただし、蒸し暑さに強く影響する絶対湿度[=水分量]は本州よりはるかに多い)。
庇に関しては、私を含めて南面の庇ばかりを強調してきました。しかし、動画で外壁面に当たる日影がどう変化していくかを確認すると、東西北面の庇も、外壁自体についてはかなり有効に影をつくってくれることが読み取れます。経験的にこれがわかっているから、沖縄の住宅は4方向に長めの庇がついていることが多いのだと思います。また、台風の強さがどんどん増すことが確実な中、長期にわたって雨漏りリスクを軽減するという意味でも庇の役割は極めて重要です。
断熱性能においては、UA値競争に拍車がかかっています。しかし・・・
この記事は新建ハウジング9月10日号8面(2024年9月10日発行)に掲載しています。
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