戸建て住宅など小規模な建築物にフォーカスした制振装置の設計手法などを示す『住宅制振設計マニュアル』(編=戸建住宅制振マニュアル編集協議会、発行=日本免震構造協会)が7月31日に発行された。ダンパーなど制振装置自体の評価・試験法をまとめるとともに、壁量計算に近い簡易な手法を含む具体的な3つの住宅制振設計法を掲載する。戸建て住宅の制振技術に特化したテキストは世界初。
同マニュアルは、小規模建築物、およびそれらに使用する制振ダンパーを想定。8章構成で、1章で制振装置のメカニズムなど基本を解説し、2、3章ではダンパー、および制振壁の評価方法を記す。第4章は、性能評価時に用いる地震動について規定している。
また同マニュアルでは、大地震動(基準法レベル2と同等なスペクトル特性をもつ地震動)による層間変形角を75分の1以下とし、軽微な損傷で抑えることを原則とする。具体的な設計手法は、①時刻歴応答解析による地震応答評価法(5章)、②等価線形理論による応答指定型の制振設計法(6章)、③耐力壁と制振壁の許容耐力に基づく簡易制振設計法(7章)の3つを示す。それぞれ設計例も掲載する。①はコンピューターによる高度なシミュレーションを前提とした内容で、②は限界耐力計算に近い手法となる。
③は、制振壁にも壁倍率に準じる指標を設け、建築基準法で定められている必要壁量から必要な制振壁の量を割り出す。2階建て以下の住宅などを想定している。大地震での層間変形角が75分の1以下になるよう、耐力壁、制振壁とも独自の評価方法により許容耐力を評価している。①や②に比べると必要な制振壁枚数は増える傾向にあるものの、一般的な仕様の木造住宅が設計でき、壁量計算や壁倍率の考え方を理解していれば十分に対応できる内容だという。
第8章では、制振設計をより確実にするための、構造計画上の諸注意をまとめた。開発者向けの情報や、制振壁・ダンパーのデータベースも付録として掲載する。
A4判221ページ、5000円(日本免震構造協会会員は4250円)。購入は日本免震構造協会のウェブサイトから。
この記事は新建ハウジング9月10日号6面(2024年9月10日発行)に掲載しています。
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