天然乾燥材や墨付け・手刻みといった大工の伝統的な技術を用いて、耐震等級3、断熱等級6・7の高性能住宅を手がける匠-TAKUMI(新潟県糸魚川市)の代表で大工の渡辺智紀さんは「自分たちのような木と大工をベースに据えた家づくりを求めるユーザーは確実にいて底堅い需要がある」と確信しながらも、その一方で住宅市場が厳しさを増し、これまで以上にコスト削減や生産合理化の圧力が強まるなか、自社のようなスタイルを成立させる「経営的な難易度は上がっている」とも感じている。【編集部 関卓実】
手刻みで加工した天然乾燥材を用いて建てた上越市にあるモデルハウス。耐震等級3、断熱等級7の基準を上回るUA値0.17W/㎡Kの平屋で、気密性能はC値0.13㎠/㎡。住まい手(施主)の協力により、暮らしの様子も含めて見学できる |
いまのところ、渡辺さんを含む大工(社員)3人により、年間4~5棟(新築・坪単価120万円程度)を丁寧につくる同社の受注は堅調だ。渡辺さんは、天然乾燥材や大工の伝統的な技術を用いること以上に「お客様により良い家を提供すること」を重視。それを具現化するためにこそ、天然乾燥材や大工の高い技術力がある。
だからこそ性能にも妥協しない。同社では許容応力度計算による耐震等級3、断熱等級6・7(UA値0.27~0.17W/㎡K、付加断熱あり)、気密はC値0.1㎠/㎡台が標準仕様。基本プランも実施設計も構造計算も外皮計算も全て渡辺さんが自ら手がける。渡辺さんは「お客様に少しでも品質の高いものをという考えのもと、木と大工へのこだわりと高性能化は全く矛盾せず、完全にリンクしている」と話す。
5棟分の木材を常時ストック
ただ、天然乾燥の木材と大工の伝統的な技術を軸とする経営を安定的に持続するのは簡単ではない。構造材は良材として知られる岐阜県の東濃桧を中心に調達し、自社の倉庫などで1年間、天然乾燥をかける。渡辺さんは・・・
この記事は新建ハウジング9月10日号3面(2024年9月10日発行)に掲載しています。
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