2025年日本国際博覧会協会は8月21日、大阪・関西万博会場のシンボルで、世界最大級の木造建築物となる「大屋根リング」(施工:竹中工務店・大林組・清水建設各JV)がつながったことを明らかにした。当初の予定よりも1カ月ほど早いペースだという。今後、4月の万博開幕に向け、エレベーターやエスカレーターの設置、屋上緑化などの工事を行う。
同日開いた会見で、大阪府の吉村洋文知事は「予定よりも早くつながったのは、建設技術の高さや効率の良い工事を実施したことによるもの。万博の準備を進める上で大きな一歩となった」とコメントした。このリングが愛される存在となるために愛称を募集してはどうかと、博覧会協会に提案したことを明らかにした。また、9月以降には万博後の土地活用、まちづくりについての提案募集を開始し、年内にもまちづくりの方針をおおむね固める予定。話し合いの中でリングの一部をレガシーとして保存するどうかも検討するとした。
「木造建築の圧倒的存在」吉村知事
「大屋根リング」は、万博デザインプロデューサーで建築家の藤本壮介さんが考案し、2023年6月30日に組立てを開始。「多様でありながら、ひとつ」との理念が込められている。木架構ユニットを円形につないだ構造で、幅約30m、高さ約20m、内径約615m、周長約2㎞、建築面積約6万㎡。木材は国産のスギやヒノキ、外国産のオウシュウアカマツを使用。日本の伝統構法である貫接合などを用いて組み立てている。
リングの屋根の下は会期中、会場内の主動線として活用。雨風や夏の日差しをしのぐ場所としても利用ができる。屋根の上はスカイウォークが設けられ、瀬戸内海や会場全体の景色も楽しめるようになっている。リングの内側には世界各国のパビリオンが建設される。
吉村知事は会見の中で、木造建築物の可能性についても言及。「高層ビルを建てる時、今はコンクリートが主流だが、これからの時代は地球温暖化に対応するためにも木造建築が有用」「私も現場で何度かリングを見たが、木造でこのようなものが作れるのかという圧倒的な存在や木のぬくもり、芸術性を感じた」「映像では十分伝わらないかも知れないが、会場で実物を見ればリングを残して欲しいという声も大きくなるだろう」などと話している。
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