東京商工リサーチ(東京都千代田区)は8月21日、「最低賃金引き上げに関するアンケート」調査の結果を発表した。有効回答は5506社。
それによると、2024年度の最低賃金(時給)引き上げ額の目安は50円(全国加重平均)となった。給与設定を変更するか聞いたところ、約6割の企業が「引き上げ後の最低賃金を上回っており、給与は変更しない」と回答。最低賃金の上昇に伴い「給与を引き上げる」企業は4割だった。現在、引き上げ後の最低賃金を「上回っているが引き上げる」は21.1%、「下回っており、同額まで引き上げる」が11.7%、「下回っており、最低賃金額を超える水準に引き上げる」が7.5%だった。現在の時給が、引き上げ後の最低賃金を下回っている企業はあわせて19.2%となり、10月以降に約2割の企業が賃上げ対応に迫られることが明らかとなった。
来年度(2025年度)の最低賃金改定で許容できる引き上げ額は、「50円以上60円未満」(33.1%)が最も多かった。今年度と同程度の賃上げなら、維持できると考えている企業が多いとみられる。「50円以上」の上昇を許容できる企業は合計64.6%で、2023年8月に実施した同様のアンケート(50.6%)よりも14.0ポイント上昇している。一方、「許容できない」と回答した企業は17.1%で、前年度から1.2ポイント上昇した。許容できる上昇額の中央値は、中小・大企業ともに「50円」だった。
アフターコロナで業績回復し、最低賃金上昇への対応余力がある企業が増えるなか、賃上げ負担が重い企業も一定数存在していることがわかる。
価格転嫁が約半数
最低賃金の上昇への対策では、「商品やサービスの価格に転嫁する」が48.5%と最も多く、次いで「設備投資を実施して生産性を向上させる」(26.7%)、「雇用人数を抑制する」(16.7%)、「従業員の雇用形態を変更する」(14.6%)が続いた。持続的な賃上げには適切な価格転嫁が不可欠であり、物価高を反映した価格転嫁が徐々に進んでいることがわかる。一方、2割弱の18.3%が「できる対策はない」と回答している。
企業規模別でみると、「設備投資を実施」は大企業(36.2%)が中小企業(25.7%)を10.5ポイント上回っている。一方、「設備投資を抑制」は中小企業(11.2%)が大企業(6.5%)を4.7ポイント上回った。そのほか企業からは、「130万円の壁もあり、稼働時間を減らすしかない」など、時給の上昇によって労働時間が短縮し、人手不足が加速することを懸念する声も聞かれた。
同社は、安定的な賃上げには、企業の自立的な売上増やコスト削減など収益強化策に加え、政策・制度による支援も重要だとしている。
厚生労働省の中央最低賃金審議会は7月、地域別最低賃金額改定の目安額について全都道府県で前年度から50円引き上げることを示した。全国加重平均は1054円となる。
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