若手設計士のみなさんこんにちは。
今回もまた、実例を見ながら住まいの楽しい場所とつながりについて考えてまいりましょう。
今回はよりたくさんの実例をお見せしたいと思います。ではどんどん見ていきましょう。
床段差で楽しい場所づくりをする
はじめの例はLDKの床に段差を設けて、場所をたくさん作った住まいです。
【写真1】と【写真2】の住まいではリビングとダイニングキッチンの間に段差を設けて、それぞれの場所を際立たせています。
段差は600ミリ、階段3段分だけです。けれども写真のように大変立体感が出ていて効果的です。
その理由は【写真1】のいちばん手前の腰壁にあります。下から上がってくる階段廻りの腰壁なのですが、この高さを奥の腰壁より低くすることで、一層の重なり感と奥行き感を出しているのです。
【写真3】の住まいではLDKの3つの場所を1段分だけの段差で表現し、緩くつなげています。
段差の寸法自体は決して大きなものではありませんが、段差がつくだけでどれだけ豊かな立体感が得られるかがよくわかる例です。
また【写真4】はLDKでなく子ども室のコーナーですが、見るからに楽しそうなキッズスペースができあがりました!
「床段差をつけるとコストがかかってしまう」「欲がでて床下のスペースに収納を作りたくなるが手間とコストが・・・」などいろいろ現実的なことがらはあると思います。けれどもシンプルで楽観的に「一段分でも立体感激増!」と考えてみましょう。こうしたらきっと楽しいだろうな、という小さな発想がやがて大きな1つの住まいに結実してゆくのです。
段は場所を縦にもつなげてくれる強力なアイテム
こうして見ていると、場所を立体的につなげていく上で「段」の存在はとても大きいことに気がつきますよね。
ならば少し考えを広げて、2~3階建ての複層住宅の場合に階段を効果的に設けたら、下階と上階はもっともっと近しい存在としてつながってくれそうですね。
本来、木造住宅の上階は2700~2900ミリくらい下階から離れています。人体のスケールを考えると、これけっこう大きいんですよね。放っておくと上階と下階は避けがたく断絶してしまいます。
この断絶をギリギリまで減らし、場所どうしを横だけでなく縦にもつなげていきたい。みなさんもそう思いませんか?
そこで次に、見事な工夫でこの断絶を克服した2つの好例をお見せいたしましょう。
上階と下階を限りなく近づけよう
【写真5】【写真6】の住まいでは、上階の階高をギリギリまで抑えて下階に近づけています。この階高は実に2450ミリ!
そして手前のダイニングスペースが下屋になっていることを活用して、勾配天井でダイニングと上階踊り場をつなげています。
こうすると、まるで頭上すぐ上に階上があるような一体感と親近感を感じますよね。勾配天井の下に上階の踊り場を突出させているところなども見事な工夫です!
次の例(【写真7】)は、まるまる2層分ある天井の高いLDKの中に、入れ子のように2階の一角を設けた住まいです。
少しでも2階と1階との心理的距離が縮まるように、途中地点である階段踊り場の存在感をうんと強調しています。
踊り場自体がすでに積極的な楽しい場所の1つになっている秀逸なデザインですね!
【写真7】東大宮の家 設計・中島行雅(エータスデザインラボ)+古谷野裕一(古谷野工務店)+森田悠紀(森田悠紀建築設計事務所) |
ところで、前々から耐力壁の扱いが気になっていませんでしたか?
閑話休題、ここではきっとみなさんが日ごろ気になっていそうな耐力壁のお話をいたしましょう。
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