断熱・気密性能が高い住宅の普及にあわせて、家全体を少数のエアコンによって、温度むらなく、かつ省エネに冷暖房する手法が広がっている。ただ一方で、「想定通りに暖まらない、冷えない」といった声も聞かれ、特に夏場の冷房でそういった問題が顕在化している。構造や温熱環境など住宅の性能設計に詳しく、工務店に対する空調計画の監修や技術協力も行っている設計事務所・JIN建築工房の小森仁さんに、現状の課題や適切な全館空調を実現するためのポイントについて聞いた。【編集部 関卓実】
小森さんは、地域工務店による高断熱・高気密住宅への取り組みが広がるなか、全館空調の最適化がひとつの“壁”となっている現状について、「断熱・気密性能を高めればエアコン1台で快適に冷暖房できるという単純な話ではない」とし、「確かに躯体性能は向上し、ミニマムな設備で必要とされる空調(熱)負荷を賄うことはできるが、エアコン1台がカバーする“守備範囲”は広がっているわけで、必要十分なスペックエアコンを選択することに加えて、空気(暖気・冷気)を適切に“動かす”という考え方が求められる」と説明する。
小森さんは空調(冷暖房)を計画する際、地域の気象条件や外皮性能を踏まえたうえで、空調負荷を計算。それに基づき必要なエアコンの台数やスペックを定め、換気(第一種・第三種)の給気、排気の位置と換気に伴う空気の経路を考慮しながら、エアコン(床下・小屋裏など)の設置場所を決める。
空調と換気が “けんか”しないように
空調負荷は、屋根や壁、窓、換気からの熱の出入りのほか・・・
この記事は新建ハウジング8月10日号16面(2024年8月10日発行)に掲載しています。
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