帝国データバンク(東京都港区)は8月1日、企業の生成AIの活用状況について調査した結果を発表した。有効回答企業数は4705社。生成AIを業務で活用している企業は、17.3%にとどまることがわかった。「活用していないが検討中」は26.8%、「活用しておらず予定もない」は48.4%と半数近くにのぼった。
「活用している」企業を従業員数別にみると、「1000人以上」(36.9%)が3割を超えた一方、「100人以上1000人未満」(18.2%)、「50人以上100人未満」(13.9%)、「10人以上50人未満」(14.3%)、「10人未満」(17.8%)は、それぞれ1割台だった。
業種別では、IT企業などを含む「サービス・その他」(28.0%)が最も活用割合が高かった。最新テクノロジーやツールに対してのイノベーターやアーリーアダプターが多く存在することが要因と考えられる。一方、「建設・不動産」(9.4%)、「運輸・通信」(10.4%)では活用が進んでおらず、「予定なし」が約6割にのぼった。
活用しているサービスは「ChatGPT」が84.2%と突出して高く、「Copilot for Microsoft 365」(26.8%)、「Gemini」(19.6%)が続いた。活用効果については、「大いに効果あり」(36.1%)、「やや効果あり」(50.6%)を合わせて9割近くが一定の効果を実感している。
活用用途については、「情報収集」(59.9%)が約6割、「文章の要約・校正」(53.9%)、「企画立案時のアイデア出し」(53.8%)が半数超えとなった。これらは日常的な業務かつプロンプトが比較的容易なため、取り組みやすいとみられる。
生成AIを活用している企業の推進体制は、「すべて内製」(57.6%)が半数以上で、外注(「ほぼ内製で一部を外注している(15.3%)」「ほぼ外注している(6.9%)」)は約2割だった。従業員数が増加するほど、内製の割合が低下する傾向にある。
活用への理解にギャップ
生成AIを活用することへの「経営層の理解」について聞いたところ、「大いに理解あり」が51.7%、「やや理解あり」が28.0%だった。回答者の階層別では、経営者の67.7%が「大いに理解あり」としているのに対し、「一般社員」は30.4%と、両者に30ポイント以上のギャップが生じていることがわかった。
また「現場の理解」では、「大いに理解あり」が23.9%、「やや理解あり」が35.6%となった。回答者の階層別では、「大いに理解あり」は経営者が29.7%、「一般社員」が19.6%で、一般社員による評価が低い傾向にある。同社は、経営者と一般社員のギャップを解消するには、経営者がビジョンを描き、目標達成に生成AIの活用が有効であることを組織内の共通認識とするしかけが必要だとしている。
生成AIを活用している企業で、指針やガイドラインを「策定している」企業は19.5%だった。「現在、策定中」は9.5%、「策定を検討している」は23.5%で、「策定に前向き」な企業はあわせて52.5%と5割を超える。「策定している」割合を従業員数別にみると、「1000人以上」が61.3%、「100人以上1000人未満」が37.0%となり、従業員数が多いほど割合が高い。「策定している」企業は、従業員1人当たりの売上高が高い傾向にあり、ルールの整備が生産性向上に寄与することを示唆している。
一方、「策定していない」企業は43.5%で、理由として最も多かったのは「必要性の優先順位が低いため」(39.2%)だった。次いで、「策定ノウハウ(人材がいない等)がない」(33.3%)、「AIを利用した製品やサービスを開発・提供していないため」(32.9%)が続いた。
リスク・トラブル対応については、「特に部門は決めていない」(45.1%)がトップで、「専門ではないが特定の部門(総務など)で対応」(22.5%)、「各部門で対応」(17.4%)が続いた。
生成AIを活用するうえでの懸念・課題は、「AI運用の人材・ノウハウ不足」(54.1%)がトップで、「情報の正確性」(41.1%)、「生成AIを活用すべき業務が不明確」(39.1%)が続いた。企業からは、「会社でどのように活用できるか分からない」「真偽を確かめる必要がある」「具体的な回答が得られない」「世論誘導される危険性」などの声が寄せられた。
近年、企業においても生成AIを取り入れようとする動きが広まり、生産性向上への活用やビジネスチャンス創出への期待が高まっている。同社は、今後ますます活用範囲が広がると予想される生成AIの活用を進めていくうえで、リスクを理解し、社内利用のガイドライン整備などに各企業が取り組んでいく必要があるとしている。
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