湘南エリアで自然素材型の家づくりを展開するecomo(神奈川県藤沢市)と、現場管理のDX化を手がけるlog build(神奈川県横浜市)の2社の代表を務める中堀健一さんは、これからの工務店のあり方として、「スマートビルダー」の必要性を説いている。これが工務店経営に与える本質とは何か−。新建ハウジング発行人の三浦祐成が聞いた。
中堀:20代前半から都内の工務店で現場監督を始めました。現場監督って、現場が終わって事務所に戻ってくるのが18時くらい。そこから工程表や図面のチェック、原価管理などをしていたら、あっという間に22時になります。私は、絶対に定時の18時半で帰りたかったのですが、物理的に難しかった。 休みも週に1回あるかないかの生活です。今もこうした時間軸の現場監督が多いのではないでしょうか。
三浦:現在と状況は変わっていないですね。
中堀:現場間を移動するのに約30分〜1時間かかります。1日8時間労働のうち、3時間は移動で消費している訳です。平成初期の話です。これだけ技術革新が発展しているにも関わらず、今も現場監督の働き方は変わっていません。住宅業界の深刻な課題だと思っています。
26歳のときに独立して、湘南エリアでecomo(神奈川県藤沢市)を創業しました。工務店を運営する中で、従来の方法では真の現場管理が実現できないことに気づきました。現場監督の違いによって、現場の状況が全く異なることが多く、お客様にとっては「良い監督に当たれば安心だが、悪い監督だと問題が…」という、まるで運試しのような状態です。施主にとって住宅は、一生かけて支払う財産であり、運任せの状況があってはいけません。
このような状況が生じる理由は、現場監督にかかる業務負担が過大であり、本来の仕事に専念できないためです。施工品質や安全管理を徹底しようとしても、それを評価するための明確な基準が存在しないという問題もあります。
誰もが恩恵を享受できる「DX化」を浸透させる
三浦:中堀さんの原体験が「Log System」に強く影響している訳ですね。
中堀:その通りです。私たちがやりたいのは、単なるデジタル化の世界ではありません。家づくりのあり方を変えて、誰もが恩恵を享受できる「DX化」を広めていくことです。オフィスや文具用品で革命をもたらした「ASKUL」、「モノタロウ」のようなサービスを生み出して、ゲームチェンジを巻き起こしたいと思っているんです。
三浦:大工不足が叫ばれていますが、何よりも「現場監督が居ない」問題も深刻です。新たな打ち手がなければ、住宅産業は持続可能ではなくります。
中堀:まず、現場監督における業務の「選択と集中」を実現できる環境をつくっていくことが重要です。昭和・平成・令和と続いてきた、現場監督のあり方をガラッと変えて、よりクリエティブな業務に集中できる仕組みを、DXを通じて構築していかないといけません。
「スーパー現場監督は必要ない」
中堀:現場監督がデスクワークに集中できるようになることで、完全着工に向けた取り組みを推進する事が可能になります。顧客や設計担当者の意図を正確に理解しながら施工を進めることができます。設計担当者と現場監督のコミュニケーションが活発になり、「施工品質の向上」という好循環が生まれていくのです。
三浦:実際に経営されているecomoではいかがでしょうか。
中堀:10年以上前からR&D(研究開発)してきました。そこで得た定量・定性的なデータをlog buildでのサービス開発に反映させています。すでに新卒入社3年目の事務系職種の女性社員が年間37棟の品質管理、安全管理を一人で担っています。まだ余力はあるので、70棟までは単独で管理できる算段です。
三浦:具体的にどんな仕組みなのでしょうか?
中堀:log buildが提供する「Log System」を導入することで、360度画像を使って遠隔から現場の様子を把握できる環境が整いました。配筋から基礎チェック、アフターサービスに至るまでの仕様をマニュアル化した標準施工手順書も作成しています。この手順書を協力業者とクラウド上で共有することで、現場で施工方法に迷った際に現場監督に連絡する必要がなくなりました。施工品質を自主施工チェックするためのチェック項目も策定しました。これを活用すれば、誰でも適切な施工が行われているか否かを判断できます。「Log System」によって施工品質のチェックがオンラインで可能になり、若い女性スタッフや専門知識のないスタッフでも効果的に業務をこなせるようになったのです。
三浦:現場監督のあり方が変わっていきそうですね。
中堀:「Log System」で忖度がなくなるんですよ。たとえば、大工が現場監督と立ち合いをして、ダブルチェックをしたとしても、関係値があるから指摘できない。でも、このシステムだと、完全な第三者が確認をするプロセスが確立されており、判断基準があるため、そもそも忖度が発生する余地がない。各項目に従って、◯か×を判断するだけ。グレーゾーンがない。これを繰り返していけば、必然的に現場の質が向上して、トラブルがゼロになります。
三浦:経営者の悩みである「人の問題」が解決できますね。現場監督が辞めれば、途端に現場が回らなくなるというリスクが回避できる。
中堀:その通りです。若手やベテラン関係なく、会社全体で品質と完全管理をしているというスタンスです。いわゆる“監督ガチャ”という概念も無くなるし、施工ミスが発生するのを未然に防ぐことができるのです。ecomoでは、こうした取り組みをセールストークとして活用しています。
三浦:ここまで中堀さんのお話を聞いていて思ったのは、“スーパー現場監督”は不要になっていくということです。これまで現場監督の仕事はブラックボックス化していて、工務店の社長ですら、その全容を把握していなかったと言っても過言ではない。現場は上手く回っているし、クオリティは抜群。しかし、その裏には浮き彫りになっていないだけで、課題が隠れているかもしれない。同時に、経営者は「いつか辞められてしまうのでは」といった、ある種の恐怖感を心のどこかに持ちながら、現場と向き合ってきた。しかし、これからは、「Log System」があることで、その前提すら無くなっていく。これは業界にとって大きなターニングポイントになる出来事だと思います。
中堀:経営的なメリットは計り知れません。
工務店の未来をつくる
三浦:中堀さんが見据える未来を教えてください。
中堀:工務店の「スマートビルダー化」に尽きます。ecomo、log buildの経営をしながら試行錯誤して取り組んできたことを、全国の工務店にオープンソースとして伝えていきたいと思っています。
民法改正などの影響もあり、今後、設計通りの施工が行われていないと、深刻なクレームに発展する可能性があります。log build としては、「Log System」というツールだけでなく、現場管理や安全管理の新たな仕組みを他の住宅会社の方々にも提供することで、集客の部分だけでなく、「作る部分」の根幹を担う現場管理を改善していくお手伝いができればと考えています。こうした活動を通じて現場監督や協力事業者の業務負荷を減らし、次世代を担う人材が住宅業界に入ってくる状況を生み出すことに貢献していきたいです。工務店の未来はスマートビルダー化によって大きく変わります。少しでもご興味がある方は、ぜひお気軽にlog buildにお問い合わせください。
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-7-1 WeWork オーシャンゲートみなとみらい8F |
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