「小さな工事から増改築までおまかせください」。このようなキャッチコピーを見かけることがあります。すべてとは言いませんが、地域一番の実績等よほど確固たるポジションを築いている会社でない限り、新規集客に苦戦しているのではないでしょうか。
リフォーム事業シフトといっても、リフォーム業界の工事単価は何百円から何千万円まで幅広いです。地方での大規模な古民家再生の場合、1億円を超えるようなリノベ案件もあります。ここまで価格に差がある業界は数少ないと思います。価格差があるからこそ、そして、業界のライフサイクルも成長期から成熟期へと変化しているからこそ、総合リフォームから専門店へと細分化が進んでいるのが現状です。
こうした市場背景がある中、今回は代表的な専門店(価格帯)ごとの市場や業態の概要を解説したいと思います。
修理、または給湯器専門(主な工事単価20万円まで)
修理専門店にとって、明瞭価格を表示することが有効です。さらに、スピード対応は優位性の大きなポイントです。あまり知られてないかもしれませんが、先行事例は豊富に存在します。チラシと店舗など販促投資する場合は損益分岐点が上がるため、工事単価が見合うように、給湯器のような低単価領域の商品群を付加し、平均単価をコントロールする動きもあります。
特に給湯器はキッチンやお風呂等に比べて集客しやすい点、手離れが良い点で注力する例が見られます。顧客を豊富に持ち、スピード対応のカルチャーを持つような会社が参入に向いており、条件が揃っているケースでは早期に軌道に乗る確率が高まります。
水まわりリフォーム専門(主な工事単価70万円)
特に地方では「水まわり(品揃え、ディスカウント)のメニュー型チラシ→水まわりの情報が豊富なサイト→水まわり展示型の店舗」というかたちこそが、一貫性がある顧客接点です。価格勝負の要素が強い領域ですので、大量仕入れができる量販店は競争優位性が高いですが、多能工によりコスト面でリーダーシップをとれるような会社ならという条件になります。ニッカホームのような有力リフォーム会社が存在しないエリアならさらにハードルが下がります。
また、キャラクターを設置し、親しみやすさを演出したりするのもこの価格帯です。商品と基本工事価格を合わせたパック価格にすることはお客様目線であると同時に、売りやすくする仕組みでもあることは言うまでもありません。
顧客ターゲットとしては大衆向けになりますが、キッチンやお風呂は集客難易度が高まっている中、地域一番の安さに価格設定したトイレなど集客商品で門戸を広げながら、収益商品を設定するというかたちが浸透しています。
組織的には新卒の即戦力化が機能しやすい点は魅力で、1店舗での仕組み(集客、営業、育成など)の横展開により、「1店舗の売上×店舗数」というシンプルな公式が成立しやすい業態です。新卒から数年はこの部門に配属されて経験を積んだ後、リノベーションの事業部へと配置転換するパターンの会社もあります。
外壁(屋根)塗装専門(主な工事単価120万円)
水まわり専門に通じるものがあり、「外壁、屋根のメニューチラシ→外壁、屋根のサイト→外壁、屋根の情報館」というかたちが基本形です。かつて、チラシ反響率が高かったエリアでもここ5年ほどで徐々にその率が下がってきている印象で複数集客ルートが必要です。
WEBだけで反響を確保するには一定以上の商圏規模が必要ですし、クリック単価も上昇傾向です。また、外壁、屋根業界では公共施設を会場にしたセミナーが以前より広く浸透しており、セミナーを集客の柱に置いている例も存在します。さらにイベントを定期開催し、集客の最大化を図る例が多いのもリフレッシュ領域の特徴です。
水まわり同様、価格勝負になりやすく、年間工事量をもとにした施工原価の交渉等常にコストダウンを追求することが求められる領域です。さらに地方エリアでも下請けから元請けにシフトする流れで類似コンセプトの競合がここ数年で着実に増えています。
業績拡大のためには、エリアの付加、客層付加、屋根(カバー工法等)工事や大規模塗装のようなさらなる領域の付加も要検討課題です。
LDKリフォーム専門(主な工事単価300万円~)
外壁(屋根)塗装専門から、戸建リノベーション領域まで価格帯がかなりかけ離れていて、その間で専門特化の可能性を探ることは理にかなっていると言えます。単品交換では差別化しづらいため、以前よりハウスメーカー各社が狙っている領域でもあります。
「LDKのチラシ→LDKのサイト→LDK(モデルルーム)が体感できる店舗」という流れを構築することが入口として前提となります。
ただ、LDKリフォーム専門店の成功事例が限られているのは、需要、競合、自社のバランスにおいて、難易度が高いのかもしれません。デザイン性は大前提として、自然素材を付加したり、断熱改修を付加したりする等、集客面だけでなく、商品面でもいかに独自性があるかが問われていると言えるでしょう。
戸建リノベ専門(主な工事単価2000万円~)
「見学会チラシ→リノベサイト→リノベーションモデルハウス(または施主宅現場)」が揃って初めて整合性がある顧客接点です。大都市圏では「リノベサイト→スタジオ」のような事例が多く見られます。Meta広告を集客の中枢に置くケースも増えてはいますが、「リノベーション+共起語+エリア名」の自然検索で反響獲得する例も見受けられます。
単価2000万円、性能向上がともなった戸建リノベーションを検討する顧客像(特に二次取得者層)を想定した場合、一定のデザイン性は必要ですが、やはり建築知識、経験や実績の豊富さが信頼につながります。ですので、今回のような販促手法や業態論と同時に、あるいはそれ以上にどのような会社が取り組むかがカギとなる領域です。
組織面でも戸建のような構造がからむ場合は、建築知識が信頼の源泉となりますので、基本、若手というより、ベテランのほうが、親和性が高いと言えます。新卒入社後、数年で活躍する人材も存在しますが、どうしても「こんな若い人で大丈夫かな」と不安になるのはリノベ顧客の心理としてはごく自然のことだと思います。
新築事業のベテラン社員をリノベ事業部にコンバートする、前述の通り、リフォーム担当やメンテ担当として経験を積んだ社員を配属させるイメージです。特に戸建住宅の劣化に対峙してきたメンテナンス担当の経験は戸建リノベーションの接客時において説得力になっています。
それぞれの特性を理解し、押さえること
以上、リフォーム事業として一括りとらえるのではなく、それぞれの価格帯ごとのポイントを見極め、集客面での顧客接点を整えながら、組織面、施工面に至るまで一貫性を持たせること、その精度を高めていくことが業績アップにつながります。さらに自社の強みとの適合性、競合状況も考慮しながら、総合リフォームではなく専門特化していくという方向性において、ヒントにしていただければ幸いです。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。