能登半島地震後の復興を進めるための国の専門組織「能登創造的復興タスクフォース会議」の2回目の会合が7月17日に輪島市内で開かれ、公費解体の加速化について意見が交わされた。
環境省の報告によると、公費解体の申請棟数は約2万3400棟で、当初の解体想定数約2万2500棟を超過。このうち7月15日までに解体に着手できたのは4698棟で、完了したのは1466棟。申請棟数に対する解体完了率はわずか6%にとどまっている。解体申請棟数が着実に増加していることから、今後さらに増加する見込み。
公費解体の課題では、①共有者全員の同意取得が困難な事案への対応、②建物性が失われた倒壊家屋などへの対応、③日程調整などに時間を要している三者立会いの円滑化・効率化、④解体工事体制の強化、⑤解体業者の宿泊地の確保、⑥自費解体希望者への対応、⑦解体廃棄物の仮置場の確保、⑧解体廃棄物の輸送手段の確保、⑨解体業者への円滑な支払い、⑩応援自治体の確保―について話し合った。
このうち①「同意取得」については、6月に改訂した「公費解体・撤去マニュアル」(第5版)に基づき、滅失登記が行われた倒壊家屋などについては、関係者全員の同意がなくても公費解体・撤去を進めることが可能に。滅失登記が行われていない倒壊家屋などについても、市町村で建物性が失われていると判断した場合には、全員の同意なく公費解体・撤去を進めることが可能となっている。それ以外の損壊家屋については、所有者が判明しない場合は民法の「所有者不明建物管理制度」を活用。共有者の意向を確認することが困難な場合も、いわゆる「宣誓書方式」の活用により、所有権に関する紛争が発生した場合に自己責任とすることで、解体が可能となっている。
宿泊費用の補助など検討
また、④「解体工事体制の強化」では、現在北陸ブロック内で確保した解体業者664班がフル稼働していないことから、県や6市町の工程管理会議で解体業者の活動の見える化を行い、工事工程を徹底的に管理する。県外・北陸ブロック外も含めた業者の確保・活用するためには、⑤「宿泊地の確保」も必要となるが、奥能登2市2町では当面、既存の民間施設を活用。今後、仮設の宿泊施設を用意する。また、解体事業者の所在地から解体現場までの往復が困難である場合には、宿泊費用の補助を行う。
⑦「解体廃棄物の仮置場の確保」に向けては、能登町・穴水町などで追加の仮置場の確保を検討。⑧「輸送手段の確保」では、陸上での広域輸送に加えて海上輸送(予定:約28万トン)を実施し、陸上輸送の負担を軽減する。
解体業者(協会)への支払い30日以内に
⑨「解体業者への支払い」については、解体業者・廃棄物処理業者が安心して事業を継続できるよう、支払いが遅滞なく行われる体制を構築する。被災者が自ら費用を負担する自費解体(⑥)の場合も、被災者が安心して申請できるよう、円滑に償還できる体制を整える。具体的には、公費解体の場合は、市町から契約先(協会)に対し、請求書を受領した日から30日以内の支払いを徹底。元請から下請に対しては、工事完了後、約2カ月以内に支払いを行うことを周知する。
■関連記事
被災建物の解体、5カ月で3% 解体事業者が被災地の現状語る
能登半島地震から半年 石川県が現状報告 解体作業に遅れ
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。