帝国データバンク(東京都港区)は7月23日、「カスタマーハラスメント」に関する企業の意識調査の結果を発表した。有効回答企業数は1万1068社(回答率40.8%)。カスタマーハラスメント(カスハラ)は、「顧客や取引先などからのクレーム・言動のうち社会通念上不相当なものであり、その手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されている。
《関連記事》顧客からの迷惑行為「カスハラ」自殺で労災認定ー千葉
直近1年以内に自社もしくは自社の従業員がカスハラなどを受けたことが「ある」企業は15.7%だった。規模別では「大企業」が21.0%、「中小企業」が14.8%、「小規模企業」が14.4%だった。
業界別では、「小売」が34.1%とトップだった。平均の約2倍で、3社に1社がカスハラを経験している計算になる。次いで「金融」(30.1%)、「不動産」(23.8%)、「サービス」(20.2%)と続いた。主に個人を取り引き対象とするBtoC業界の割合が比較的高い。「建設」は14.5%だった。企業間の取り引きが多い「製造」(7.8%)や「運輸・倉庫」(12.9%)などは、平均を下回っている。
一方、カスハラ被害が「ない」企業は65.4%で、「ある」企業の4倍以上となった。規模別では「大企業」が49.7%、「中小企業」が68.3%、「小規模企業」が71.6%となり、企業規模が大きいほどカスハラ被害を受けていることがわかる。
企業からは、「自分の思い通りの結果にならないと罵倒する年配の方が多い」(金融)、「ネットに書くと脅されるほか、一方的に事実無根の悪評を書き込まれ、対応に苦慮している」(専門商品小売)などのほか、カスハラに該当するか判断が難しいといった声が多数寄せられた。また、「BtoBの事業会社であり、表立ったカスハラ経験がなく、遭遇する機会もない」(建材・家具)といった声も聞かれた。
カスハラや不当な要求に対して、何らかの「取り組みあり」の企業は50.1%、「特に取り組んでいない」は47.4%とほぼ二分する結果となった。具体的な取り組み内容で最も多かったのは、電話に録音機能をつけるなどの「顧客対応の記録」(20.1%)で、唯一2割を超えた。次いで、「カスハラを容認しない企業方針の策定」(12.3%)、「カスハラ発生時のサポート体制の構築」(9.6%)、「被害者への相談・通報窓口の設置」「警察や警備会社、行政との連携」(ともに8.2%)が続いた。
業界別では、直近1年以内にカスハラ被害が多い業界で取り組みが多く、被害が少ない業界は取り組みも少ない傾向にあった。企業からは「顧問弁護士と迅速な連絡・相談する体制を整えている」(旅館・ホテル)、「カスハラをしてきた企業との取り引きを停止している」(建設)など、毅然とした態度でカスハラに対応する声があがった。
カスハラなどの迷惑行為によって、従業員の精神的苦痛や退職リスク、業務効率低下などの悪影響が生じる可能性があるため、厚生労働省は企業に従業員保護を義務付ける法整備を進める方針を示した。また、東京都は全国初のカスハラ防止条例の制定を目指している。同社は、まだ被害を受けていない企業も含め、円滑な商取引を維持するためにカスハラなどへの対策が求められるとしている。
■関連記事
「カスハラ」4人に1人は我慢、対策の遅れ浮き彫りに
【弁護士が解説】顧客からのハラスメント”カスハラ”対応策
カスハラ、業種別に対策支援 過労死大綱改定案―厚労省
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。