47都道府県の知事で組織する全国知事会は7月17日、「第8回国産木材活用プロジェクトチーム会議」(リーダー:小池百合子東京都知事)を開き、「国産木材の需要拡大に向けた提言(案)」(PDF)について協議し承認した。提言では、▽新たな需要の創出▽公共建築物の木造化・木質化の推進▽大規模な木造建築物の設計や施工を担う人材の育成▽新たな技術の研究開発▽生産・流通体制の強化―などについて、施策の方向性をとりまとめている。今後、この提言を基に国に対して要請活動を行う予定。
新たな需要創出に向けた取り組みでは、民間非住宅建築物の木造化・木質化の推進、国産木材・木材製品の輸出拡大を重点事項として掲げた。このうち木造化・木質化の推進では、JAS認証を受けた構造材の流通量拡大、CLTの普及、国産木材の利用を促進する制度の創設を目指す。例えば、建設費の5%程度を木造化・木質化の費用に充てた場合に、補助や税制の優遇措置が受けられる「5%フォー・ウッド(仮称)」のような制度を想定している。
国産材の輸出拡大では、相手国の建築法令の調査・整理、現地向けの設計・施工マニュアルの作成などを行うことで、ジャパンブランドとして注目される木造軸組工法の海外普及を目指す。他にも土木分野での利用(型枠用合板、看板などの工事関連資材への活用)、セルロースやリグニンの成分を使用した新素材の技術開発、建築物省エネ法に対応する技術の開発・普及への支援などを国に要請する。
建築士の育成、国産材への転換にも重点
公共建築物の木造化・木質化の推進では、木造化・木質化促進に必要な予算の確保に、人材の育成では建築士などの育成に重点を置く。国が主体となり人材育成を行うだけでなく、地方公共団体や関係団体が実施するリカレント教育や連続講座などに対しても支援を求める。 また、大学の教育課程での木造建築や木材利用のカリキュラムの充実を図る。
他に、施主への木材利用の理解醸成を図るため、モデル的な建築物の事例、木材を活用することによる地域への経済波及効果、木材が心理面・身体面や学習面などに与える効果などについて情報発信を強化。関連した研究に対する支援制度の創設を目指す。
生産・流通体制の強化では、外国産木材の供給量の低下や価格の高騰により国内の木材需給がひっ迫することを防ぐため、国産木材への転換を図る。また、昨年5月に花粉症に関する関係閣僚会議で決定した「花粉症対策の全体像」(PDF)に基づいて、花粉症対策苗木への植え替えを推進する。
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