長崎県諫早市に本社を構え、県内3市にエリアを限定して注文住宅事業を展開する浜松建設が、全国へ打って出る。北は北海道、南は九州まで新築や古民家再生、リノベーションなど、あらゆる相談が舞い込み、「商圏拡大」の一途をたどっている。この4年間、精力的に運用を続けてきたYouTubeやSNS戦略が実を結んだ。12都道府県から問い合わせがあり、7月時点で4都県からの受注を決めた。現場管理から施工は現地の工務店に依頼するスキームを構築。4月までに沖縄や和歌山を除くエリアでの施工体制を整備した。全国で「注文住宅の受注難」が叫ばれる中、同社は“発想の転換”で新たな事業の柱を確立させつつある。【編集部 栁原 潤】
商圏拡大の打ち手となったのは、同社が運営する公式YouTubeチャンネルだ。開設は2011年10月だが、本格的に運用を開始したのは約4年前。コロナ禍で対面での接客や営業活動が制約されていたこともあって動画に活路を求めた。地元生活者へ向けた情報発信の一環だった。
YouTubeの登録者数は7月11日時点で3240人と、工務店が運営するチャンネルとしては、やや小規模な印象を受ける。ただ、各動画の再生回数を見てみると、古民家リノベを題材にした解説動画は22万回、平屋モデルのルームツアーは12万回などと、「家づくりの検討層」には強いコンテンツ力があることがうかがえる。1万回を超える動画も多数ある。
同社によると、昨年の4月ごろから「古民家リノベを任せられないか」「エリア外の新築の設計業務を請け負っているのか」といった商圏外からの問い合わせが相次いだ。共通するのは、確かな設計力の信頼感と社長の濱松和夫さんに対するファン化だ。
動画の事例解説では、宣伝要素は薄めながら、建築としての魅力を濵松さん自身が自分の言葉で視聴者に語りかける。台本は一切ない。あくまでYouTubeは広告媒体ではなく、浜松建設としての世界観を発信するための手段として、生活者目線を意識しながら、建築士として住宅の魅力を伝える。長崎弁が相まって、「親しみやすい」との声が届いている。
エリア外での施工体制を構築
商圏外からの12件の問い合わせを内容別に見ると・・・
この記事は新建ハウジング7月20日号1面(2024年7月20日発行)に掲載しています。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。