長野県北部地震で被災した栄村で住宅被害を調査した新潟大学災害復興科学センターの卜部(うらべ)厚志准教授は、震度6強でも全壊・半壊家屋が比較的少なかった要因について「強い揺れが局地的だったこと、揺れの性質が木造に大きな被害を与えるものではなかったことなどが考えられる」と指摘した。
長野県のまとめ(3月24日時点)によると、地震による住宅の被害は全壊2棟、半壊12棟でいずれも栄村。3月15日までには応急危険度判定を終え、総数755棟の5分の1にあたる152棟が「危険」と判定されている。
卜部准教授は基礎に鉄筋が入っていない、壁の量が少ないなど古い耐震基準で建てられた住宅の被害率が高いとしながらも「そうした家が全滅しているわけではない」と指摘。木造住宅の被害は周期1秒弱~2秒の揺れが卓越したときに大きくなる傾向があるが「極めて周期の短い地震動が卓越したのではないか」と話した。
また建物のつくり方や構造だけでなく、地盤の形状変化が住宅被害の原因になっていると説明。同村は全体に深いところの地盤が固く、表層地盤も安定しているが「国道・鉄道沿線など近年に盛土や造成を行った場所、水田脇など近年に宅地にした場所で地盤に起因する被害が起きている」とした。
ただし、同村はいくつもの沢筋を挟んで複数の集落が点在する山間地で、宅地化が進んでいないため住宅の地盤被害も少ないという。今回の地震で同村は、震源から南西の方向に強く揺れ、そのなかで地盤の悪い場所に立つ建物や耐震性の低い建物が、ピンポイントで大きな被害を受けたようだ。
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