住友林業(東京都千代田区)、BrainEnergy(東京都渋谷区)、東京慈恵会医科大学(慈恵医大、東京都港区)はこのほど、木材を用いた治療環境が、うつ病患者の精神・心理療法に補助的な効果があるかを検証した結果を発表した。
臨床試験では、慈恵医大附属病院の精神神経科内に、内装をスギ材で木質化した診療室と通常の白いクロス壁の診療室を用意。通院中のうつ病性障害患者20人を、2つの診療室に10人ずつランダムに振り分け認知行動療法を16週間実施し、「木の心理療法室」の効果を検証した。
それによると、「木の心理療法室」では「抑うつ・不安」が強い患者ほど香りがよいと回答する割合が高いことがわかった。木質化した環境、木の香りが好印象につながることから、うつ病治療の導入・継続の後押しとして有効であることが示唆されたとしている。
同研究では、うつ病の重症度を評価する「ハミルトンうつ病評価尺度」や、脳の血液量の変化をもとに脳機能を計測する「近赤外スペクトロスコピー(NIRS)」などによる観察・検査を行い、治療環境の違いが精神・心理療法の効果にどう影響するかを検証。「室内の好ましさ」を、快適さ・香り・温度・空間・明るさの観点から測定したところ、香り以外は「木の心理療法室」と「通常の心理療法室」で差がみられなかった。
3者は、2020年11月から「木質内装建材や木の香りにより構築された治療環境が精神・心理療法の効果に与える影響」に関する共同研究を進めており、6月に開催された第120回日本精神神経学会学術総会で今回の研究成果を発表した。住友林業は、研究計画の作成、木質内装建材・木の香り等の環境構築の監修等を担当。BrainEnergyは、研究計画の作成、治療環境の監修構築、データ測定・分析評価を担当。慈恵医大は、同大学精神医学講座による研究計画の作成、医学的側面からの評価を担当した。
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