LIFULL(東京都千代田区)が運営する不動産・住宅情報サービスの「LIFULL HOME’S」はこのほど、不動産業界におけるカスタマーハラスメントの被害実態について調査。直近の3年間で「カスハラ」を経験した人が3割以上に及び、企業も十分な対応策を取っていないことが浮き彫りとなった。調査は2024年6月20日~27日まで、不動産業務に従事している370人を対象にインターネットで行った。
直近の3年間でカスハラを経験したのは3人に1人。性年代別では30代以下の男性の被害が多く、カスハラを受けるシーンとしては、メールや電話など顔を合わせない「問合せ対応時」が圧倒的に多いことがわかった。内容としては7割が「無理な要求」を突き付けられたと回答。カスハラについて、「既に十分な対策が講じられている」会社は約1割で、3割は対策の検討もされておらず、対策がされていない企業の従業員の4割が「自己判断」で対応している現状も明らかになった。また、4人に1人は「我慢」していることがわかった。
カスハラを「受けたことがある」、または「自身は受けたことがないが、他の従業員が受けているのを見た、聞いた」と回答した人にその内容について聞いたところ、「無理な要求」(71.5%)と「高圧的な態度・発言(命令口調など)」(65.2%)が半数を超えた。
具体的な内容としては、「当社の業務範囲外で起こったご不満内容(引渡し後の管理会社とのやりとり、引越し屋さんの手際など)の責任を訴求され、当社の悪評を言いふらすなどと脅された」「管理駐車場に違法駐車があり、借主に管理不行き届きと言われ、謝罪のために一席設けるよう要求された。断るとクチコミにネガティブな投稿をされた」などがあった。
LIFULL HOME’S総研の中山登志朗さんは、カスハラで無理な要求をされた場合について、「その多くは断ることもできるが、断ると契約交渉を打ち切られたり、SNSにネガティブな投稿をされたり、“会社に迷惑をかけてしまうかも知れない”という心理的抑制が働き、断り切れず応じてしまうことも多々あり、事態の深刻さがよくわかる調査結果となった」と考察。「カスハラは、場合によっては強要罪、脅迫罪、恐喝罪、威力業務妨害罪などの構成要件に該当する行為になり得ることを顧客も業務担当者も知る必要があり、カスハラ対策のポスターを掲示するだけでも抑止効果があると言われている」とコメントしている。
厚生労働省は2022年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」やリーフレット、啓発ポスターを作成し、国土交通省は2023年にマンション標準管理委託契約書を改訂し、カスハラ対応の規定等を追加している。
■厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
■国土交通省「マンション標準管理委託契約書を改訂」
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