新建ハウジングは8月6〜7日、 “工務店力”を生かしリノベーション市場をつかみとるため、実務者や専門家が集い英知を結集させる『東京リノベサミット』(会場:東京ビッグサイト、西3ホール)を開催する。今号から3回にわたって、リノベ専門家のコダリノ研究所(横浜市)代表の稲葉元一朗さんの連載「現場で役立つ工務店リノベの勘所」から再編集してお届けする。今回は基本戦略から組織体制の構築などについて解説する。
「木を見て森を見ず」全体設計ができていない状態
まず、最初に取り上げるのは、各要素が「点」になっていて、全体でつながりができていないというケース。例えば性能向上を体感できるモデルハウスやモデルルームを開設したとしても、地域に存在が認知されていないというケースが増えている。
たとえ認知されて来場客が増えたとしても、接客の体制ができなかったり、営業の仕組みが弱かったりして、成約につなげることができないという例もある。いずれも、全体設計、いわばパズルのピースがそろっていないため、事業化しづらいというケースだ。
解決の方向性全体最適が必須
リノベ事業に限らず、事業化とはお金がまわることであり、すなわち、部分最適、局所最適でなく、全体最適が必要であることを意味する。
ハード面、ソフト面を含めた全体像は図表の通り。人材も含めたつながりがある全体像を描き、各要素が相互に補い、強め合うという考え方が大切になってくる。
位置取りという基本戦略の失敗パターン
戸建てリノベ市場を広くとらえると、その領域でフルライン(全方位)を狙う大手リフォーム会社が存在する。つまり、今から取り組むということは、一部エリアを除き全国のどのエリアでも、後発になるという状況。トップシェアの大手リフォーム会社と似たような訴求、重なるようなポジショニングでは、同じ土俵での戦いとなり、厳しい状況になることが想像できる。
価格で勝負するという考え方もあるが、相手も日々コストダウンを追求している。30分で見積もりを算出できるシステムをはじめ、スピード営業や診断営業の仕組みも構築している。特に高いクロージング力をもつ店長クラスや大幅値引きが承認されている支店と競合すると苦戦することも少なくない。
解決の方向性専門特化せよ
後発であれば、専門特化は大前提として差別化要素が必要だと考えるのがセオリー。単に差別化を目的とするのではなく、強みに立脚しながら、「競合が徹底できていなくて、お客様にとって良いこと」を追求すること。
顧客を引きつけて、優位に立つためには断熱耐震の追求なのか、性能向上は当然のこととして自社ならではのデザインや情緒的な訴求なのか。地域や自社の強みに応じて方向性を見極める必要がある。
営業、組織面の課題
「未経験者でも~」というセミナーのキャッチコピーを時々目にするが、当然ながら、リノベ未経験者が初回接客、診断、見積もり作成、プラン提案からクロージングに至るまで一人で担当することは相当ハードルが高い。工事単価1000万円以下のリフォーム領域で、実績を蓄積していたとしても、デザインリフォームの範囲内ならともかく、築古戸建てのリノベにおいて、顧客と信頼関係を築くこととはイコールではない。
解決の方向性役割分担の明確化を
業界未経験者でもコミュニケーション能力が高ければ、一定期間の同行営業やロープレ研修を経て、リノベーション事業の初期営業担当として活躍する例はある。
ただし、ほぼ例外なく、構造が絡んでくる場面やクロージングのタイミングで有資格者や経験豊富なベテラン社員などとチームを組めたり、設計サポートを得られたりといった背景がある。連携やスムーズな引継ぎは簡単なことではないが、役割分担を明確にすることが大切だ。〈次号は7月20日号に掲載〉
この記事は新建ハウジング7月10日号6面(2024年7月10日発行)に掲載しています。
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