国土交通省は激甚化・頻発化する水災害に対する新たな治水対策について、有識者による勉強会で議論を行い、提言をまとめ6月28日に公表した。有効な治水対策でありながら活用が限定的となっている、河川の地下空間を活用した対策を促進する考え。提言には、河川区域以外の施設とのネットワーク化など7つの推進策が盛り込まれた。
現在の治水対策は、河床掘削などにより洪水時に河川の水位を下げ、洪水を安全に流すことを基本的な考えとしている。しかし、激甚化・頻発化する水災害に対しては、河川の水位を低下させる効果が限定的で、対策時に河川のオープンスペースが失われるなど、地域社会や動植物の生態系などに影響を及ぼすことが課題となっている。
そこで勉強会では、これまで工作物を設置していなかった河川地下空間の有効活用について検討。7つの推進策のうち、①「河川地下空間の縦断方向への活用」では、河川縦断方向に地下構造物を整備した事例について情報を収集。配慮事項や管理手法、事業効果などを整理する。
地下空間のルール化など検討
②「河川地下空間利用のマネジメント」では、さまざまな利活用が想定される都市部などの地下空間のルール化を検討。後発で整備を行う事業者が地表から深い位置で施設整備をせざるを得ない状況を解消するため、モデル河川を用いて地下空間のゾーニングを行う。③「他事業連携の推進」では、他施設との共同整備の事例を整理。コスト面への配慮のため、施設運用の調整項目の整理やルール化を実施する。
④「河川区域以外の施設とのネットワーク化」では、まとまった範囲で事業用地の確保が可能な河川から離れた施設とのネットワーク化を検討。用途廃止される地下施設や民間の地下管路などを活用し、貯留機能や遊水機能を確保する際の課題と対策についてとりまとめる。
⑤「既設構造物に対する安全確保の技術向上」では、完成後よりもリスクが高いとされる施工時のモニタリング方法や基準について検討。⑥「施工・維持管理も容易な構造」では、施工・維持管理基準類の充実、⑦「技術力の伝承」では河川トンネル技術者の育成に向け、「技術相談窓口の設置」や「技術研修の実施」を検討する。
◆資料:「浸水被害軽減に向けた地下空間活用のあり方 提言」浸水被害軽減に向けた地下空間活用勉強会(PDF)
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