「しあわせや」の屋号を掲げる田尻木材社長の田尻博巳さんは、厳しい市場環境だからこそ、社員とともにつくり上げた「すべては家族の笑顔のために」という経営理念が力を発揮すると考える。目先の変化に踊らされることなく、地域に根差す工務店としての責務を全うする。
経営理念に基づき、住宅のスペックもしくは価格競争と一線を画し、「家族が幸せになる場所をつくる」という家づくりを貫く。そのため、営業の最前線を担う「コンシェルジュ」にノルマはなく、顧客に寄り添うことを最終目的としている |
「ごく普通の世帯」にフォーカス
理念経営を貫く田尻さんだが、足もとの現実は厳しく、特に資材や土地の価格の上昇が、受注のブレーキになっている。田尻さんは「肌感覚で住宅の取得費用が、ここ2~3年で2割ぐらいアップしている感じだ。当社の営業を担うコンシェルジュがお客様に提示する資金計画も、これまでは土地・建物で3000万円台だったのが、ここのところは4000万円台になっていて、決断を戸惑うお客様も少なくない」とする。さらに主要商圏の長野市は、ハウスメーカーや分譲系のパワービルダーによる土地の囲い込みも影響し、土地自体が見つかりにくい状況となっている。
ただし、そうした市場環境の変化を踏まえても、「一次取得層を中心とする地域のごく普通の世帯」にフォーカスし、その顧客層に対して「良質で家族を幸せにする住まいを届ける」という基本方針にぶれはない。田尻さんは「目先の状況に応じて、ローコストや高所得層など、顧客のレンジをずらしていくつもりはない」と言い切る。
厳しい市場環境は、新設住宅着工戸数の推移を見ても明白だが、田尻さんは「われわれのような年間30~40棟規模の地域工務店にとって、全体のパイ(市場規模)の増減はそれほど影響が大きいとは考えていない」とし、「パイは自分たちではどうにもできない。自分たちに可能な打ち手を考えていかないと、われわれの業績はコントロールできない市場や経済情勢次第ということになってしまう」と話す。
認知度向上に力を注ぐ
田尻さんは「とにかく住宅の取得を検討している、していないに関わらず、地道に地域における企業としての認知度を高めていくことが大事」と訴える。「知ってもらっていないがゆえに、家づくりのチャンスをもらえていないお客様が地域にいくらでもいる。ともかく認知度を高めることに注力していきたい」と力を込める。裏を返せば・・・
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