参創ハウテック社長の清水康弘さんは「明日、何が起きるかは分からないが、新築市場の縮小や大工の減少など、10年後はおおよそ予想できる」との考えのもと、常に中長期的な視座で経営の打ち手を講じてきた。それが予測不能なコロナ禍に対しても有効に作用した。
創業当初から、デザインと性能の高いレベルでの融合を目指して、愚直に取り組んできた。経営規模(受注棟数)の拡大は追わずに、施工品質と建築の面白さの両立を掲げ、設計や現場監督、大工の育成と技術の継承に力を注ぐ |
コロナ禍を経て成長
同社は、コロナ禍の数年も含めて、増収増益と経営は堅調に推移している。「コロナ禍を経て、当社は成長した」と清水さんは振り返る。“巣ごもり”の暮らしのなかで生活者が住まいの環境に目を向け、インターネットを活用した情報収集を積極的に行うようになった社会で、パッシブデザインを採用し、ほとんどが断熱等級6~7という温熱性能に優れる同社の家づくりに向かうぶれない姿勢に対する評価が相対的に高まった。コロナ禍の真っただ中の2021年度、売り上げは前年度から約2億円増えて20億円を突破し、営業利益も倍増した。
もちろんコロナが収束した今も、パッシブデザインと高い断熱・気密性能は同社の強みとなっている。ここ数年で、断熱等級6・7が新設され、足下の東京都では都が省エネ性能の高い住宅に補助金を交付する「東京ゼロエミ住宅」の活用も広がっており、一般の人たちの住宅性能に対するリテラシーも高まっている。そんな中、清水さんは「ここのところ当社では、東京ゼロエミ住宅を入り口とする家づくりの相談が増えていて、受注の追い風になっている」と現状について説明する。
軽井沢に営業拠点を開設
また、コロナ禍のなかでは、「東京五輪開催後の経済の減速や消費増税による駆け込み需要の反動減、団塊ジュニアの大量退職、総世帯数・新設住宅着工戸数の減少などの影響が一気に訪れると言われた“2020年ショック”に備えていたことも、はからずも(経営における)コロナ対策として効果を発揮した」と清水さんは振り返る。
その備えの1つは、長野県軽井沢町に営業拠点を置く「デュアル拠点化」だ。東日本大震災(2011年)の後、東京都内の企業などがリスク分散を図るために、営業や社員の生活の拠点を地方に移す動きを見て、清水さんは「今後は“2地域居住”が広がっていくだろう」と予測。そこで・・・
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