厚生労働省は25日、中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)を開き、2024年度の最低賃金引き上げ額の「目安」について協議を始めた。物価高や人手不足が続いており、過去最大の43円増を実現した前年度を上回る引き上げを視野に、労使らが調整する。審議会は歴史的な大幅賃上げで決着した今春闘の流れも踏まえ、7月下旬にも議論をまとめる。
現在の最低賃金は全国平均で時給1004円。前年度の改定により、初めて1000円の大台を超えた。岸田政権は30年代半ばまでに1500円へ引き上げる目標を新たに掲げ、早期の達成を目指している。
中央審議会の冒頭、武見敬三厚労相は「賃上げの流れを非正規雇用労働者や、労働者の7割が働く中小企業にも波及させていくには、最低賃金による底上げが必要だ」と訴えた。その上で、「物価を上回る賃金の上昇を実現していかなければいけない」と強調した。
4月の実質賃金は、高水準だった今春闘の賃上げ結果が反映され始めたものの、前年同月比マイナスが続いた。一時期、伸びが鈍化した消費者物価は、エネルギー価格の上昇や食料品の値上げなどでここにきて再び加速。政府による電気・ガス料金の補助金がいったん終了することも家計に重くのしかかる。最低賃金の大幅な引き上げは待ったなしの状況だ。
地域格差の是正も大きな課題。現在、都道府県別で最も高い東京都が1113円なのに対し、最も低い岩手県は893円と200円以上の開きがある。労働組合の中央組織、連合は今後2年程度で「すべての都道府県で1000円以上」に引き上げる目標を掲げる。全国平均も政府目標を上回る「35年までに1600~1900円」を目指す。
一方、最低賃金は近年、急ピッチで引き上げられてきた。人件費や原材料費の上昇で経営が厳しい中小・小規模事業者も多く、日本商工会議所は審議会で企業側の適正な支払い能力について理解を求める方針だ。
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