帝国データバンク(東京都港区)は6月25日、「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)」の結果を発表した。BCPを「策定している」企業は前回調査(2023年5月)から1.4ポイント増の19.8%となり過去最高を更新した。また、「現在、策定中」(7.3%、同0.2ポイント減)、「策定を検討している」(22.9%、同0.2ポイント増)も合わせた「策定意向あり」の企業は、1.4ポイント増の50.0%と4年ぶりに5割に達した。
都道府県別では、「高知」(68.4%)が唯一6割超えとなり、「静岡」(58.3%)、「石川」(57.7%)、「富山」「愛媛」(ともに57.6%)が続いた。震災の記憶が新しい北陸地域、南海トラフ地震の被害が想定される地域が比較的高くなっている。
BCP策定率を規模別でみると、「大企業」が37.1%(1.6ポイント増)と2016年から9.6ポイント上昇しているのに対し、「中小企業」は16.5%(1.2ポイント増)で4.2ポイントの上昇にとどまっている。
BCP策定の意向がある企業に対して、事業の継続が困難になると想定しているリスクを聞いたところ、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が71.1%でトップだった。次いで、サイバー攻撃など含む「情報セキュリティ上のリスク」(44.4%)、インフルエンザ、新型ウイルス、SARSなどの「感染症」(39.9%)、電気・水道・ガスなどの「インフラの寸断」(39.6%)、「設備の故障」(39.1%)が続いた。
リスクに備えて実施・検討していることで最も多かったのは「従業員の安否確認手段の整備」(68.9%)で7割近くにのぼった。「情報システムのバックアップ」(57.9%)、「緊急時の指揮・命令系統の構築」(42.6%)が続き、人的資源や企業資産の保護を中心に備えていることがわかる。企業からは「震災時は、交通インフラ・生活インフラに多大な影響を及ぼす可能性があるため、早期復旧に向けた初動体制が組めるよう定期的にBCP訓練を実施」(建設、東京都)などの声が寄せられた。
BCPを「策定していない」企業に理由を聞いたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」(41.6%)、「策定する人材を確保できない」(34.3%)、「策定する時間を確保できない」(28.4%)が上位となった。企業規模を問わず、スキル・人手・時間の3要素がBCP策定の障壁となっていることがわかる。一方、「必要性を感じない」(20.5%)は、中小企業(21.0%)が大企業よりも5ポイント以上高く、従業員数「5人以下」の企業では30.3%と3割を超えている。企業からも「(BCPがなくても)社員が少ないため口頭で十分伝わる」(不動産、東京都)といった声が複数寄せられた。
近年、地震や台風などの自然災害だけでなく、サイバー攻撃やテロ、感染症、地政学的リスクなどさまざまな経営上のリスクが高まっており、企業にはリスク発生に備えた準備が強く求められている。BCPの策定では、事業の継続と企業価値の維持・向上の観点から緊急事態に対する準備を進める必要があり、同業他社や行政などと連携し備えていくことが重要だとしている。
同調査は、TDB景気動向調査2024年5月調査とともに行ったもの。有効回答企業数は1万1410社。
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