高砂建設(埼玉県蕨市)は、1975年の創設以来、50年近くにわたって、地域の住宅需要に応えてきた。事業の根幹に据えているのが、ソーラーサーキットと地場材である西川材を組み合わせた同社独自の注文住宅だ。住宅の性能向上に早くから着手し、顧客の満足度を高めることに努めてきた同社の取り組みは、業界の内外から高い評価を得ている。代表取締役社長の風間健さんにその経緯と理念について話を聞いた。
高砂建設と「ソーラーサーキット」との出会いは約35年前にさかのぼる。「当社は地場の工務店。地域に根付いていくためには、当社を選んでくださったお客様に“高砂建設を選んでよかった”と言っていただけるような仕事をしないといけない。そのためにはどうするのがよいのかを模索していたときに、ソーラーサーキットを知ったのです」。風間さんは当時をこのように振り返る。
二重通気で無垢材を生かす
風間さんが評価したのは、ソーラーサーキット独自の二重通気工法だ。押出法ポリスチレンフォーム断熱材による外断熱によってしっかりと木造躯体を包み込んだうえで、夏は、基礎の床下ダンパーを開放し壁体内を通気して、熱や湿気を小屋裏から放出、床下地温を活かして壁体内を冷ます。冬は、床下ダンパーを閉鎖し通気を止めて、室内の温度を極力外に逃がさないようにする。安定した地温や外気など自然のエネルギーを積極的に活かすことで、冷暖房が効率よく効くようにし、省エネとともに快適な環境を実現する仕組みだ。
「日本で住宅を考えるうえでもっとも問題となるのが湿気。湿気は快適性を損なうだけでなく、壁体内の結露、ひいては躯体の腐食の原因となる。外断熱したうえで壁体内を通気することで湿気も排出できるソーラーサーキットは、木を活かす家づくりにとって理にかなっている。私たちの目指す家づくりに最適だと判断しました」(風間さん)。
同社では、地元埼玉県の気候で育った西川材を採用した家づくりをブランドの柱としている。「地元の無垢材をつかった家づくりこそ、地場の工務店である私たちにふさわしいと考えています。木にこだわり、木を大事にする私たちの考え方に、結露リスクを低減し、躯体の健全性を保ちやすいソーラーサーキットは親和性が高く、お客様に対しても説得力をもつことができると感じたのです」(風間さん)。
長期の性能と品質を追求
外断熱と二重通気によって守られた木造の躯体は、壁体内結露やそれによる躯体の腐食、さらにはシロアリによる食害などのリスクが軽減。劣化しにくく、住宅の長寿命化を図ることができる。当時はバブル経済の影響で住宅も大量供給される時代。そのような時流の中でも、高気密・高断熱に注力し、住宅の長寿命化に努める高砂建設の姿勢はぶれることがなかった。
「日本には四季があり、高温多湿。冬の寒さ、夏の酷暑、雨、風、日光の熱や紫外線などが家を劣化させていきます。当社では、永く住まうお客様の健康や将来の暮らしを真剣に考え、住宅に負荷を与える要素に対策を施し、住まいを長持ちさせる。そのためにはどうしたらいいかを追求してきました」(風間さん)。そうした姿勢を後押しするように、2000年には品確法に基づく「住宅性能表示制度」が開始。2008年には「200年住宅」構想が国から示され、住宅の品質や性能を重視する流れに。同社では長期優良住宅にも早くから着手し、いまでは全棟で適用させている。
さらに風間さんは長寿命住宅の普及に向けて、長寿命住宅普及協会の設立にも尽力。適切な維持管理を行うことで家の価値を守る建物価値保証システムとして、「ベストバリューホーム」という認定制度の確立に貢献した。「せっかくいい家を建てているわけですから、10年後、20年後もできるだけその価値を保ちたい。引き渡し後のアフターサポートの体制と価値を評価する仕組みをきちんとつくるべきだと考えました。お客様に安心していただけますし、お客様からの信頼も得ることができ、結果として、紹介受注やリフォーム受注にもつながっています」(風間さん)。
こうした同社の取り組みは、住宅業界内外で広く評価を受け、ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー 2022大賞受賞、2023年度東京エコビルダーズアワードにて「リーディングカンパニー賞」をはじめ4部門を受賞するなど、各種のコンテスト等でさまざまな賞を受賞している。「私たちは、住宅の品質と性能を高めるという、これまで志してやってきたことを続けているだけです」と風間さん。同社の先進的な姿勢に時代が追いついてきたと言えるのかもしれない。
レジリエンス性も重視
ソーラーサーキットと西川材による家は、同社のオリジナルブランドとして、地元の顧客にも幅広く受け入れられた。本格的に販売を開始する前には、この仕様でモデルハウスを建て、社員が実際に泊まってみることで、そのメリットを体感したという。
「各室の温度差が少ない、二重通気による夏の対策、室内の換気が効率的、という3点は特に素晴らしいと実感しました」(風間さん)。現在は、埼玉・東京にて4カ所でモデルハウスを展開し、2つのモデルハウスでは宿泊体感が可能。見込み客に快適な温熱環境、空気環境を体感してもらうのに活用している。ソーラーサーキットと西川材の仕様は、高気密・高断熱で、無垢材の自然な風合いの中で快適に暮らせる、ということを確かめたうえで、注文住宅の主力商品として導入することに。
特に顧客から評判がよかったのは、二世帯住宅だ。夏冬の寒暖の激しい埼玉県でも、「高砂建設の家なら省エネルギーで快適に過ごせる」、「家中温度差が少ないから、冬でも廊下や脱衣所などで寒さを感じて不安になるようなこともないですね」と喜ばれている。また近年はレジリエンス性も重視。ゲリラ豪雨などで頻度を増す水害への対応として、ソーラーサーキットの外断熱という特徴を活かした住宅を研究中。「耐水害対策研究会」(※1)に参画、床上浸水の実験を自社敷地で実施するなど中心的な存在となっている。「万一の災害にも備えた住宅」というセールスポイントは、新築受注の面でも有効であるようだ。
軸を定めて変化に対応
ソーラーサーキットと西川材という家づくりの軸を定めた高砂建設。長年ソーラーサーキットに取り組んでいるため、その特長を熟知しており、ノウハウも豊かに蓄積している。だからこそ、温熱環境、快適性、省エネ、長寿命、資産価値といった様々な切り口からお客様にベストな提案をすることが可能なのだろう。
自社の家づくりの理念に沿って、技術を活用し、社会や顧客のニーズに柔軟に対応していく。その姿は、ソーラーサーキットと地場工務店の理想的な関係とも言える。大きな転換期を迎えた日本の住宅業界の中で、高砂建設では今後につながるビジネスモデルが息づいている。
(※1)大学、住宅メーカー、建材メーカー、設計事務所、工務店などが参画し水害に強い住宅を研究中。
ソーラーサーキットは株式会社カネカの登録商標です。
(sponsored by カネカのお家 ソーラーサーキット)
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。