政府が6月21日閣議決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」は、物価上昇を上回る賃上げの「定着」を柱に据えた。2024年春闘での33年ぶりの高水準の賃上げを、人件費の価格転嫁の強化などを通じて中小企業や地方へと波及させる。全世代を対象としたリスキリング(学び直し)支援で働く人の能力を高め、その能力が発揮できる仕事に就けるよう「ジョブ型人事」の導入を進める。
骨太方針では、学び直しのための「教育訓練給付」の給付率を最大7割から8割に引き上げる方針を明記。大学と産業界が連携して、最先端の知識などを身に付けるプログラムを創設し、25年度中に約3000人の参加を目指すことも盛り込んだ。
ジョブ型人事では、導入済みの20社程度の仕組みを具体的に記載した「指針」をこの夏にも公表。他企業での導入を後押しする。
学び直しの現状を巡っては、人材大手リクルートなどが昨年10~11月、欧米、アジア・太平洋の先進国と新興国11カ国の転職経験者を対象に調査を実施。学び直しに週3時間以上取り組んでいると回答した割合は日本では3割未満と最下位となり、「日本におけるリスキリングは意識面だけが高く、実践に結び付いていない」と結論付けられた。
骨太の方針では「雇用政策の方向性を雇用維持から、成長分野への労働移動の円滑化へとシフトしていく」と明記した。賃金の改善を伴った労働移動を実現させるためには、転職と結び付いた形での学び直しを浸透させられるかが課題となりそうだ。
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