東京商工リサーチ(東京都千代田区)はこのほど、「2024年問題」について、企業を対象にアンケート調査を実施。その結果、「2024年問題」の影響について「マイナス」と回答している企業が、半数を超えていることがわかった。
アンケートは2024年6月3日から10日にインターネット上で行い、有効回答5099社を集計、分析した。同調査は2023年10月に続き、2回目。
経営に「マイナス」の影響と回答した企業は55.3%で、前回の調査(2023年10月)の61.9%から6.6ポイント改善したが、依然として企業経営に影響を及ぼしていることがわかった。
産業別で「マイナス」が最も多かったのは、卸売業の65.8%。2位が建設業の64.1%だった。前回調査と比べ、農・林・漁・鉱業を除く9産業で「マイナス」の回答率が下がった。前回の調査では、時間外労働の規制による影響が不透明で、「マイナス」影響を危惧する企業が多かったが、「適用後は影響が見えてきて、不安感が薄れた企業が多いようだ」と同調査は分析している。
「2024年問題」の「マイナス」影響の具体的な内容については、「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が最も高く71.4%と、前回に引き続きトップだった。原材料や燃料費アップ、人手不足などの対応に苦慮するなか、「2024年問題」で運賃や作業費などのコストが上昇傾向にあり、さらなる業績悪化を懸念する企業が多い。
次いで、「稼働率の低下による納期の見直し」が22.8%で、稼働率の低下で納品スケジュールに支障が出ることを懸念する企業が多い。その中でも、建設業が36.3%(161社)で回答率が高かった。
建設業は特に労務管理の負担増に懸念
建設業について言えば、「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」と回答した企業が56.6%で最も高い。次いで、「稼働率の低下による利益率の悪化」が44.2%で、3位が「労務管理の煩雑化」の42.4%だった。特に、「労務管理の煩雑化」は、その他産業の回答率10.4%との格差が大きい。規制が適用された後、経営への影響が明確になり、労務管理の負担増を訴える企業の割合が高まってきたといえる。
また、2024年1月から5月にかけて、「人手不足」関連倒産(後継者難を除く)は118件発生している。このうち建設業は30件(前年同期比150.0%増)で大きく増加。円安や原油高などによる資材や燃料費などのコストアップで、収益が悪化した企業は多い。「2024年問題」で今後の見通しが立たず、「市場から退出するケースがさらに増える事態も懸念される」と同調査は報告している。
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