住まいと健康の関係性に関する研究が進む中、ヒートショックや血圧など、高齢期の身体への影響が主に注目を集めていますが、子育て世帯の女性や小さな子どもも高性能住宅に住むことで健康リスクが軽減されることが明らかになりつつあります。今回は「だん」18号から、母子保健・産後ケアがご専門の福島富士子さん(東京医療保険大学特任教授)のお話を紹介します。
ホルモンと上手に付き合って冷えない環境を整える
女性の生涯は、自身の女性ホルモンといかにうまく付き合うかがテーマと言っても過言ではありません。
女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があり、月経、妊娠、出産、更年期、閉経といったライフステージにともなって分泌量のバランスが大きく変わり、心身に大きな影響を及ぼします。
これら女性ホルモンは女性らしい体や美肌、妊娠・出産しやすい状態をつくるのに欠かせない一方で、例えば、月経前症候群(PMS)や月経不順、子宮内膜症、子宮筋腫、産後うつ、乳がん、卵巣がん、更年期障害、骨粗しょう症といった女性特有の不調・疾患と深い関係があります。
女性ホルモンの変化はすさまじいものです。毎月の生理時のホルモン変化がマンションの20階程度とすると、出産時にはエベレストの頂上から一気に平地に下降するほどの勢いで女性ホルモンが減少すると言われています※1。分娩で女性ホルモンがほぼゼロになったお母さんの自律神経や免疫、メンタルはボロボロで、元に戻るまでに2週間から1カ月かかるとされます。
この不安定な時期のお母さんの心身の負担を軽減するため、中国・韓国・台湾では専門施設での「産後ケア」が当たり前に行われています。一方日本では・・・
(※1) 出所「産前産後の妻を守るためのガイドブック」横浜の産み育てを考える会
この記事は新建ハウジング6月20日号16面(2024年6月20日発行)に掲載しています。
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