あまりにも建て主の要望が細かいので、工務店社長のCさんは、打ち合わせの内容を毎回、議事録にまとめていた。いざ内装工事に入ったときに建て主が「これは違う」と現場に搬入されたクロスを指さす。当初の予定から変更したはずだが、当時の議事録がなぜか見つからない。証拠がないまま、不毛な水掛け論に…。
Cさんはおおらかなキャラクターが持ち味の工務店の2代目。これまで地元の昔なじみの顧客と長い付き合いを続けてきた。今回の建て主夫妻も、先代が世話になった町内会長からの紹介だった。
いつもの調子で「ご要望は何でも言ってください」と言ったものの、今回の建て主はやや雰囲気が違う。ご主人は自動車メーカーのエンジニア、奥様は中学校の教員という夫婦で、いろいろと要望が細かい。内装は自然素材がいい、特に左官材は○○、クロスはアメリカの△△、キッチンは××のメーカーがいい…。
「それだけならまだいいのですが、言っている内容がころころ変わるんですよ」とCさんは困り顔。先週は「これがいい」と言っていたのに、今週になると「あれがいい」と言う。
「これは危ない」と予感したCさんは、毎回の打ち合わせの内容を複写式の用紙に書き込んで、日付を記入。お互いにサインとハンコを入れたものを双方で保存することとした。
変更を記録したはずの議事録が見つからない
事件が起きたのは上棟後、内装工事が始まった頃だった。現場に搬入されたクロスの品番を見て、建て主夫妻がびっくりしたような声を挙げた。「これ、私たちが頼んだものと違う!」。
現場監督から連絡を受けたCさんもびっくり仰天。なぜなら・・・
この記事は新建ハウジング6月20日号7面(2024年6月20日発行)に掲載しています。
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