富士経済(東京都中央区)はこのほど、ペロブスカイト太陽電池をはじめとする「新型・次世代太陽電池市場」を調査し、その結果を「2024年版 新型・次世代太陽電池の開発動向と市場の将来展望」にまとめた。
それによると、製造工程が少なく低コスト化が期待できることや、軽量化・薄膜化が可能であることから次世代太陽電池の本命と目されるペロブスカイト太陽電池(PSC)の本格的な量産は2020年代後半になるとみられ、2040年の世界市場は2兆4000億円と予測する。国内での商用化は2025年ごろとみられ、その後市場は中長期的に拡大すると予想。BIPV(建材一体型太陽電池)やBAPV(建物据付型太陽電池)向け、PSC/C-Siタンデム型の開発・生産によって急成長が期待でき、2040年度の市場は233億円になると予測する。
PSC市場の基板別構成比の推移としては、フィルム基板型は2030年以降に本格的な市場が立ち上がり、2040年の世界市場は5100億円(構成比:21%)になると予測。ガラス基板型は既存のC-Si生産ラインを活用した製造が可能であることや、応用製品の用途が広いこと、耐久性や歩留まりといった生産技術の観点で難易度が低いことから将来的にも市場の多くを占め、2040年の世界市場は1兆8900億円(構成比:79%)になると予測する。
国内では、参入企業の開発注力度の高さから、当面はフィルム基板型が50%以上を占めると予測。PSC市場の拡大にともなってガラス基板型も増加し、2040年度の構成比は30%程度に落ち着くものの、海外と比較してフィルム基板型が多くを占めると予想する。
色素増感太陽電池(DSC)の2023年の世界市場は110億円。2040年は350億円になると予測。無線通信やセンサー用途での商用化が先行していたが、近年は消費者向けの電子機器や充電器などの用途開拓が進められている。製品当たりの搭載容量が小さいという課題があり、将来的な市場は他の新型太陽電池と比較して小さく留まると予想する。
有機薄膜太陽電池(OPV)の2023年の世界市場は260億円。2040年は1000億円になると予測。IoT機器向けや電子機器向けに加え、屋外での長期利用を想定したBIPV/BAPV向けでも商用化が進んでいる。軽量・薄膜・フレキシブルで鉛不使用という特性を生かした用途開拓で、DSCやPSCと棲み分けることにより、一定の市場規模を確保すると予想する。一方でPSCの開発に軸足を移す企業も増えており、海外ではOPV生産設備の売却事例もみられる。
調査期間は3月~4月。
■関連記事
YKK APと関電工が業務提携 ビルの窓で発電 市場投入
次世代太陽電池を港湾施設に 「ペロブスカイト」耐久性を実証
曲がる太陽電池、実用へ新組織 官民150超の団体で今月発足
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。